ミュージカル『刀剣乱舞』トライアル公演 大人気2.5次元ミュージカルの原点を振り返る

ミュージカル『刀剣乱舞』大人気ミュージカルシリーズの幕開け

2015年から始まった2.5次元ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ(以下『刀ミュ』)は
ブラウザゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」を原案とする舞台です。
どの公演もチケットやグッズがすぐに売り切れる大人気作となっています。
今回は『刀ミュ』の原点であるトライアル公演を振り返ってみたいと思います。

大人気キャストが出演!チケット争奪戦が確定した瞬間

ブラウザゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」は2015年1月からサービスが始まりました。
日本刀を擬人化したキャラクター『刀剣男士』を率いて敵と戦うゲームです。
個性豊かで魅力ある『刀剣男士』が人気を集め、あっという間にユーザーが増え新規登録を停止するほどでした。
そのサービス開始からわずか数か月後、2015年6月に『刀剣乱舞』の舞台化が告知されたのです。
2.5次元ミュージカル(歌劇)と2.5次元舞台(一般演劇)の2ジャンルで展開するという発表は話題を呼びました。

2015年8月に『刀ミュ』へ出演するキャストが発表されると2.5次元舞台ファンは大いに喜びます。
なぜなら『刀剣男士』を演じるキャストは2.5次元舞台に出演経験がある方が多かったのです。

三日月宗近役の黒羽麻璃央さん、今剣役の大平峻也さん、加州清光役の佐藤流司さんは
ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズンに出演していました。
黒羽さんは青春学園3年 菊丸英二(青学7代目)
大平さんは青春学園1年 加藤勝郎(青学6代目)
佐藤さんは四天宝寺中2年 財前光を演じて人気を博しています。

小狐丸役の北園涼さんはミュージカル「忍たま乱太郎」で中在家長次を演じており
石切丸の崎山つばささんは舞台「こどものおもちゃ」に出演しています。
岩融役の佐伯大地さんは2.5次元系作品への出演はなかったものの、映画やテレビドラマなどで活躍していました。

当時から出演舞台のチケットを手に入れるのが難しいほど人気を得ていた方もいたため
『刀ミュ』はキャスト発表の日からチケット争奪戦が確定した2.5次元ミュージカルとなったのです。

一流スタッフが集結!約束された勝利の布陣

さらに『刀ミュ』は実績と人気があるスタッフや会社を起用しています。

制作会社のネルケプランニングは舞台制作を中心とした企業です。
ミュージカル「テニスの王子様」など人気2.5次元舞台を数多く手掛けています。

演出家の茅野イサムさんは様々な舞台の演出を担当してきた方です。
声優さんが出演する「サクラ大戦」の歌謡ショウシリーズや
ミュージカル「エアギア」など2.5次元舞台の経験もあります。

脚本の御笠ノ忠次さん(現在は伊藤栄之進さん名義)は
若手演出家コンクールで最優秀賞を受賞した経験もある方です。
舞台「東京喰種トーキョーグール」などの2.5次元作品も多く生み出しています。

振付の本山新之助さんは2.5次元作品はもちろんのこと
テレビ番組のダンサーや武将隊の振付なども担当しています。
ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズンでは越前南次郎役として出演していました。

キャストはもちろん制作サイドも人気がある方ばかりで
ますます『刀ミュ』は注目度の高いミュージカルとなりました。

ゲーム好きにも初見にも分かりやすく面白いストーリー

「刀剣乱舞」の世界では歴史改変をもくろむ敵と戦うため
物に宿る心や力を励起する審神者(さにわ=プレイヤー)が
日本刀から生み出された付喪神の『刀剣男士』を過去の時代へ送り込んでいます。

『刀ミュ』はそういった「刀剣乱舞」の設定を知らない方でも分かりやすいお話になっています。
トライアル公演と阿津賀志山異聞(あつかしやまいぶん)のストーリーは同じで
源義経と弁慶の歴史を改変しようとする敵を『刀剣男士』たちが阻止するという物語です。

本作には源義経と弁慶に縁がある『刀剣男士』が2人登場します。
今剣は源義経の守り刀であり義経が自刃する際に使われました。
岩融は弁慶が愛用していた薙刀とされています。
『刀剣男士』たちにとって審神者は主(あるじ)として仕えるべき存在です。
しかし今剣と岩融にとっては元の主といえる源義経と弁慶も大切な存在になります。

審神者や『刀剣男士』は歴史改変を阻止する立場にありますから
歴史を変えさえないためにも、源義経と弁慶は史実どおりの最期を迎えなくてはなりません。
しかし元の主に死期が迫っていると分かっていながら助けられないという
苦悩や葛藤を抱えて『刀剣男士』は戦い続けます。

このように日本史のなかでも特に有名な源義経と弁慶にまつわるストーリーですから
「刀剣乱舞」を知らない初見の方も十分楽しめる内容となっています。

必見!6人の個性的な殺陣

原案のゲームである「刀剣乱舞」には戦闘シーンがあります。
『刀ミュ』はその戦闘シーンを再現した『刀剣男士』たちによる殺陣も見どころです。
キャラクターによって使う日本刀の長さが違うため戦い方が全員異なるのです。

三日月宗近と小狐丸は太刀というやや大きい刀を用いてます。
同じ種類の日本刀を使うので似たような殺陣になるかと思いきや
三日月宗近は舞うように優美で軽やかな動きで魅せ
小狐丸は獣のような荒々しい動きで敵を倒していくという正反対の殺陣を見ることができます。

石切丸は大太刀という太刀よりもさらに長い刀が使われています。
穏やかな性格を反映してゆったりとした動きが多いキャラクターですが
戦いの場ではその大きな刀を力強く振るって敵を倒していきます。

今剣は短刀を構えて素早く軽やかな殺陣を見せてくれます。
舞台上を所狭しと飛び回り敵を翻弄する姿は
キャラクター設定にある「鞍馬の小天狗」「元気に跳ねまわる」という面を反映しているようです。

岩融は薙刀で敵を豪快になぎ倒していく爽快感あふれる殺陣です。
長いリーチを生かして一度に多くの敵を切っていく力強さが魅力となっています。
薙刀を扱っているため日本刀とは違った構えや動きになるのも見どころです。

加州清光は打刀という一般的にイメージされる長さの日本刀で戦います。
おしゃれに気を遣っており畑仕事のような汚れる仕事は気乗りしないという性格の彼ですが
戦闘では普段と異なる少し荒っぽい口調で勇猛な殺陣を披露してくれます。

6人それぞれが異なる殺陣を見せてくれる戦闘シーンは必見です。
ゲーム内で使われているイラストのポーズや衣装もしっかり再現されており
「刀剣乱舞」ファンの方ならさらに楽しめる場面となっています。

革命的な刀ミュ第二部のライブパート

『刀ミュ』は2.5次元作品の中では珍しい舞台構成をしています。
前半の第一部はミュージカルパートで上述のようなストーリーや殺陣が展開され
後半の第二部はライブパートになり『刀剣男士』たちが前半とは異なる歌やダンスを魅せてくれます。
第二部に限って観客はペンライトや応援うちわを振ることもできるのです。
こういった一つの作品内で二種類のステージを楽しめるという構成は革命的でした。

例えばミュージカル「テニスの王子様」ではペンライトやうちわなどを使うことはできませんが
劇中で歌った曲をライブ形式で披露する『ドリームライブ』というイベントがあり
キャストが歌っている場面などで観客がコールをしたりペンライトを振って応援できます。
しかしあくまでミュージカル本公演とは別イベントであり日程や会場も異なるのです。
『刀ミュ』は本公演後にライブを行うので、ミュージカルとイベントを一度に味わえます。

実はこういった二部構成の舞台に実績がある方が『刀ミュ』に携わっています。
それは演出家の茅野イサムさんです。
茅野さんは舞台「サクラ大戦」歌謡ショウシリーズを長年手掛けてきたのですが
「サクラ大戦」も『刀ミュ』と同じように二部構成で展開されるのです。
この構成を取り入れることで『刀ミュ』はより魅力的な舞台となりました。

トライアル公演とは思えない満足度

原案のゲーム「刀剣乱舞」がサービス開始してから数か月後に始まった『刀ミュ』トライアル公演は
千秋楽公演が配信されたライブビューイングの映画館も満員となるほどの人気を博しました。

上述のとおり実力あるキャストやスタッフのファンが殺到したのはもちろん
2.5次元作品の特長である「原作の再現度」が高かったことも人気の一因と言えます。
ゲーム内に出てくるセリフやシチュエーションが舞台上に登場し
キャラクターの衣装や性格なども忠実に再現されていました。
またゲームではイラストで表現される戦闘シーンが殺陣で表現されたことで
プレイヤーが頭の中で想像していた情景が目の前に現れるという体験ができたのです。

さらにミュージカルパートが終わった後に始まるライブパートでは
アイドルのライブさながらに煌びやかなステージを魅せてくれるため
観客はミュージカルとライブの興奮冷めやらぬまま舞台を見終えることになります。
そのため大変満足度が高い舞台作品となっているのです。

トライアル公演の後に上演された『刀ミュ』はより洗練され完成度が高くなっているので
新しい公演を見たことがある方がトライアル公演を見ると荒く見える部分があるかと思いますが
初演である本作からすでに舞台作品として完成されています。

今や大人気2.5次元ミュージカルとなった『刀ミュ』の原点であるトライアル公演は
ぜひ多くの方に見ていただきたい舞台の一つです。

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