本作『グリーンマイル』は1996年にスティーブン・キングが発表したファンタジー小説だ。「ショーシャンクの空に」のフランク・ダラボン監督とスティーブン・キングが、再度タッグを組んだ感動作。1932年大恐慌時代のアメリカ南部、死刑囚が収容されている刑務所が舞台になっている。アメリカ、日本ではネタバレを防ぐために毎月1冊ずつ、計6冊が6ヶ月連続で刊行され話題になった。物語は1992年に主人公のポールが、老人ホームで友人のエレインに60年以上前の体験談を聞かせるといった形となっている。主な舞台は回想の1932年で、この時代はコールドマウンテンの刑務所で未だに電気椅子での死刑が行われていた時代であり、また恐慌時代で多くの人が就職難に苦しんでいて、「失業」が現代よりも恐れられているといった設定になっている。舞台はノースカロライナ州だが、現在は電気椅子による死刑は廃止されている。題名の『グリーンマイル』とは、死刑囚が獄舎から電気椅子まで最後に歩む緑色の通路のことであり、実際には1マイルもなく「遠い道」を意味している。
目次
『グリーンマイル』キャスト・スタッフ紹介
- 製作国 アメリカ合衆国
- 配給 ワーナー・ブラザース / ユニバーサル・ピクチャーズ / ギャガ=ヒューマックス
- 監督 フランク・ダラボン
- 脚本 フランク・ダラボン
- 原作 スティーヴン・キング
- 公開年 🇺🇸1999年12月10日 🇯🇵 2000年3月25日
- 上映時間 188分
- 出演者
- ポール・エッジコム(トム・ハンクス / ダブス・グリア)
- ブルータス・“ブルータル”・ハウエル(デヴィッド・モース)
- ディーン・スタントン(バリー・ペッパー)
- ハリー・ターウィルガー(ジェフリー・デマン)
- パーシー・ウェットモア(ダグ・ハッチソン)
- ハル・ムーアズ(ジェームズ・クロムウェル)
- ジョン・コーフィ(マイケル・クラーク・ダンカン)
- ウィリアム・“ワイルド・ビル”・ウォートン(サム・ロックウェル)
- エデュアール・“デル”・ドラクロア(マイケル・ジェッター)
- ジャニス・エッジコム(ボニー・ハント)
- メリンダ・ムーアズ(パトリシア・クラークソン)
- バート・ハマースミス(ゲイリー・シニーズ)
- アーレン・ビターバック(グラハム・グリーン)
- トゥート=トゥート(ハリー・ディーン・スタントン)
- クラウス・デタリック(ウィリアム・サドラー)
- トム・ハンクス
カリフォルニア州ヘイワードの「シャボー・カレッジ」で演劇を学んだ後、「カリフォルニア州立大学サクラメント校」に編入。1979年にニューヨークへ。その翌年「血ぬられた花嫁」で銀幕デビューを果たす。1993年、エイズを取り扱ったシリアスなドラマ「フィラデルフィア」そして1994年には「フォレスト・ガンプ / 一期一会」で2年連続、アカデミー主演男優賞を受賞した。それまで、全米長寿バラエティ番組や軽妙なコメディ映画などで活躍しており、これを機にライトコメディ俳優から一躍オスカー常連の名優へと成長を遂げる。以降は、数々の話題作や大作に立て続けに主演を重ねていき、映画「すべてをあなたに」で監督としても高い評価を得た。
- デヴィッド・モース
高校卒業後、ボストンの「ウィリアム・エスパー・スタジオ」で演技を学び、1970年代の初めから「ボストン・レパートリー・シアター」で舞台に立つ。1980年代にニューヨークへ移り、オフ・ブロードウェイの舞台で活躍。1980年に映画『サンフランシスコ物語』で銀幕デビューを果たすが、端役ばかりが続き、テレビや舞台での活動が中心だった。とはいえ、ハリウッドのメジャーな作品からヨーロッパのアート系映画までその活動は幅広い。
- バリー・ペッパー
学生時代はラグビーやフットボールなどのスポーツに明け暮れながら、その傍ら演技を学び始め、1992年にテレビドラマの端役からキャリアをスタート。1996年に銀幕デビューを果たした。日本では映画「プライベート・ライアン」の狙撃兵『ジャクソン二等兵』でよく知られている。2001年「61」でエミー賞主演男優賞(ミニシリーズ / テレビ映画部門)とゴールデングローブ賞男優賞(ミニシリーズ・テレビ映画部門)にノミネートされた。
- ジェフリー・デマン
ユニオン大学卒業後の1970年代にイギリスへ移り、オールド・ヴィック・シアターで演技を学ぶ。帰国後は、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーやオフ・ブロードウェイなどの舞台で活躍。1978年にテレビドラマで俳優デビューし、1980年にエレン・バースティンの映画で銀幕デビュー。その後も役者として着々とキャリアを重ねている。1995年には、日米合作で寺尾聰ら出演の「ヒロシマ 原爆投下までの4か月」でロバート・オッペンハイマーを演じた。ホラー映画やスリラー映画に出演することが多く、近年ではフランク・ダラボン監督作品の常連俳優として知られていて、「ブロブ 宇宙からの不明物体」以来ほとんどのダラボン監督の長編作品に出演している。
- ダグ・ハッチソン
幼少のほとんどはデトロイトとミネアポリスで過ごし、その後ニューヨークへ移り住む。名門ジュリアード音楽院へ進学後、アクティング・コーチであるサンフォード・マズナーの元で2年間修行した。その後、地元の劇団の舞台などで活動を始め、徐々にテレビドラマなどの脇役として映像作品に出演。そしてTVドラマ「Xファイル」第1シーズンのミュータント、ユジーン・トゥームズ役で一躍有名になる。本作出演後、徐々にその名が認知され始め、映画「シャフト」や「アイ・アム・サム」などの話題作に出演している。
- ジェームズ・クロムウェル
父親は俳優で映画監督のジョン・クロムウェル、母親は女優のケイ・ジョンソンの俳優一家。舞台で経験を積み、1976年に銀幕デビュー。その後目立ったヒット作はなかったが、1995年の映画「ベイブ」で無口な牧場主を演じてから知られるようになった。現在は幅広い役柄で多数の作品に出演。なんと、これまでに3回もアメリカ大統領を演じている。
- マイケル・クラーク・ダンカン
高校でフットボールを経験するも、母の忠告で断念。アルコーン州立大学に進学したが、母の病気のために退学。地元でガス会社や警備会社、飛行機会社、バーの用心棒などで治療費を稼ぎ、母の病気が治るのを待ってから俳優になるためにハリウッドに向かった。ハリウッドでは小さな役をもらいながら要人(ウィル・スミスなど)のボディーガードで生計を立てていた。そして1995年の映画「フライデー」で銀幕デビューを果たす。1998年の映画「アルマゲドン」で共演したブルース・ウィリスとは共演作が多く、ブルースはダンカンの才能を高く評価し、数々の映画に出演させている。また、本作のコーフィー役をフランク・ダラボン監督に強く推薦したのもブルースである。2012年に心筋梗塞を発症し治療を続けていたが、数ヶ月後に心臓発作を起こして帰らぬ人となった。54歳という若さだった。
- サム・ロックウェル
両親は共に俳優で、サムが5歳の時に離婚。父親の元で暮らすが、夏休みになるとニューヨークの母親の元を訪れていたという。10歳の時に母親が主催する即興コメディで初舞台を経験。中学校卒業後はサンフランシスコ・スクール・オブ・アーツへ進学した。卒業前に中退をするが、アウトワード・バウンドスタイルの高校で卒業資格を取得。高校卒業後はニューヨークへ活動の拠点を移した。1989年に低予算ホラー「マニアック1990」で銀幕デビュー。ウィリアム・エスパー・スタジオで演技の基礎を習得し、「ミュータント・タートルズ」などの映画に出演してキャリアを積んでいく。その後、本作や「チャーリーズ・エンジェル」などで一癖も二癖もある悪役を演じ、俳優としての地位を確立。2002年にはジョージ・クルーニーの監督デビュー作品「コンフェッション」で初主演を飾り、ベルリン国際映画祭の男優賞を受賞した。2017年公開の「スリー・ビルボード」では初ノミネートながらアカデミー賞、ゴールデングローブ賞で助演男優賞を受賞し演技が高く評価され、翌年には「バイス」でジョージ・W・ブッシュを演じて2年連続でオスカーにノミネートされた。
- マイケル・ジェッター
個性的な脇役で知られる俳優。テネシー州のメンフィス大学へ進学し、当初は医学を専攻していたが、後に演技に興味を持ち、専攻を演劇に変更した。徐々にメンフィスの舞台小屋やプレイハウスなどで舞台に立つようになる。そして活動の場を少しずつ広げ、ブロードウェイやオフ・ブロードウェイにも進出。1990年に出演したミュージカル舞台「Grand Hotel」でトニー賞を受賞、1992年にはテレビシリーズ「Evening Shade」でエミー賞を受賞している。因みにセサミ・ストリートにも出演していた。1979年に「ヘアー」で銀幕デビューを果たし、その後も自身の特徴を活かしたキャラクターで多くの映画に出演。個人的には、本作の死刑囚役もそうだが、ウーピー・ゴールドバーグ主演の大ヒットコメディ「天使にラブ・ソングを2」の教師役が印象深い。2003年、ハリウッドの自宅で死去。AIDSを患っていたが、状態は長年安定しており、死因はてんかん性発作によるものだと言われている。50歳という若さだった。
- ボニー・ハント
高校卒業後は看護師として働いていたが、1984年、ジョーン・キューザックらと共に即興劇団を共同で立ち上げる。1986年、即興コメディ集団のセカンド・シティに入団。1988年に「レインマン」で銀幕デビューを果たした。1993年、シットコム(シチュエーション・コメディ)「The Building」で脚本と主演を務め、2000年にはロマンティック・コメディ映画の「この胸のときめき」で映画監督デビューを果たし、更に2002年からはABCのシットコム「Life with Bonnie」で脚本と主演を担当した。その他、ピクサー・アニメーション・スタジオの「カーズ」や「トイ・ストーリー3」で声優としても参加している。
- パトリシア・クラークソン
イェール大学とフォーダム大学で演技を学び、1987年「アンタッチャブル」で銀幕デビュー。2002年の「エデンより彼方に」で批評家からの高い評価を得て、ニューヨーク映画批評家協会賞や全米映画批評家協会賞を受賞した。2003年には3作品で審査員特別賞を受賞。テレビシリーズ「シックス・フィート・アンダー」にゲスト出演し、エミー賞を二度も受賞している。2018年に「シャープ・オブジェクツ」に出演し、翌年の第76回ゴールデングローブ賞で助演女優賞(シリーズ・リミテッドシリーズ・テレビ映画部門)を受賞した。
Melody of Movieの評価
86点
■各レビューサイト参考
映画.com:3.9
Yahoo!映画:4.14
Filmarks:4.0
みんなのシネマレビュー:3.15
※みんなのシネマレビューは10段階→5段階評価に換算しています
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『グリーンマイル』あらすじ
1995年、老人ホームの娯楽室でミュージカル映画「トップ・ハット」を見たポールの脳裏に60年前の記憶が甦る・・・といった場面から物語はスタートする。1932年、ジョージア州のコールド・マウンテン刑務所で看守主任だったポールは、死刑囚舎房Eブロックの担当だった。部下は副主任のブルータスをはじめ、頼れる連中揃いだが、州知事の甥である新人のパーシーだけは、どうしようもない問題児だった。ある日、ジョン・コーフィという2メートル近い大男の黒人がコールド・マウンテン刑務所へ送られてきた。彼は幼女姉妹をレイプし虐殺した罪で死刑を宣告されたのだが、その風貌や罪状に似合わないほど弱々しく、繊細かつ純粋な心を持っていた。程なくして、ウィリアム・ウォートン(通称ワイルド・ビル)という凶悪な死刑囚も送られてくる。あらすじの詳細を書いてしまうと、ほぼネタバレになってしまうのでこれ以上は割愛させていただこう。
『グリーンマイル』見どころ
死刑囚が収監されている専用の棟[Eブロック]での、丁寧に描かれた人間模様や、死刑囚と刑務官との間に起こる奇跡。人の正しい行動を通し、神の存在を暗示させるような内容。厳格な規則の中で動く刑務官たちが時折見せる、好奇心や冒険心を表す時の表情や行動。見どころは沢山ある。本作にて3度目のオスカーを狙う名俳優トム・ハンクスの演技はもちろん、コーフィー役のマイケル・クラーク・ダンカンや新人刑務官の大問題児を演じるダグ・ハッチソンの迫真の演技も見どころの1つだ。人によっては、「ダグを俺自身の手でぶっ殺してやりたいくらい憎い」と言わしめるほどなので、相当な演技力だ。実際、私もそれくらいイライラしながら観ていた(笑)やはり基本はヒューマンドラマなので、数多くの作品で脇を固める重厚な俳優陣の演技が見どころになるだろう。
『グリーンマイル』主要登場人物紹介
- ポール・エッジコム / トム・ハンクス / ダブス・グリア
コールド・マウンテン刑務所Eブロックの看守主任で、この物語の主人公。在職中は、78回の死刑執行の指揮をとった。尿路感染症を患っている。まだ40代で若いが、2人の子供はどちらも成人している。
- ブルータス・“ブルータル”・ハウエル / デヴィッド・モース
コールド・マウンテン刑務所Eブロックの看守副主任。ポールの相棒であり、正義感の強い大男。独身。自称ブルータル(乱暴者)と言っているが、これは冗談で、「ゴツい体格のくせに、必要に迫られなければ蠅1匹殺せない男」とポールに称されている。
- ディーン・スタントン / バリー・ペッパー
コールド・マウンテン刑務所Eブロックの看守。ポールの部下の中では一番の若手。2人の子供がおり、間もなく3人目が生まれる。繊細で涙もろい。
- ハリー・ターウィルガー / ジェフリー・デマン
コールド・マウンテン刑務所Eブロックの看守。看守の中では最年長。冷静で物静かな性格。ポール同様、子供は成人している。
- パーシー・ウェットモア / ダグ・ハッチソン
コールド・マウンテン刑務所Eブロックの新人看守。州知事と義理の血縁関係にあり、コネがあるのをいいことにやりたい放題のクズ人間。自尊心が高く大物ぶっているが、実際は臆病者。ポールに「筋金入りに残酷な男で、冷酷で不注意でバカと3拍子揃っている」と評されている。
- ハル・ムーアズ / ジェームズ・クロムウェル
コールド・マウンテン刑務所の所長。妻のメリンダが難病を患っており、そのことで日々頭を抱えている。ポールとはプライベートでも仲が良く、家族ぐるみの付き合い。
- ジョン・コーフィ / マイケル・クラーク・ダンカン
双子の幼女をレイプし、惨殺した罪でコールド・マウンテン刑務所に投獄されることになった。飲み物のコーヒー[Coffee]と発音が似ているが、スペルは[Coffey]というフレーズが、自己紹介時は必ず相手に伝える決まり文句になっている。身長は約2m、体重126kg。深みがあり、低い響きでこもった声質。天涯孤独の身で子供のように暗闇を恐れ、繊細かつ純粋な心を持つ巨漢の黒人。自分の名前以外は字が書けないので知能はあまり高くない。更に記憶に障害があるらしく、過去についてはほとんど「覚えていない」と語っている。
- ウィリアム・“ワイルド・ビル”・ウォートン / サム・ロックウェル
通称「ワイルド・ビル」。しかし、本人はこの呼び名を嫌っており、「ビリー・ザ・キッド」を自称している。かなり凶悪でイカれた囚人。強盗を犯し多数を殺害している。そのうちの1人は妊婦だったというから、いかに凶悪かがわかるだろう。手に負えない為、いくつもの刑務所をたらい回しにされている。
『グリーンマイル』ストーリー・感想
主人公のポールが、老人ホームの娯楽室で名作「トップ・ハット」を観た瞬間に昔の記憶が溢れ出し、泣きながら娯楽室を出た。心配した友人のエレインに涙の理由を話し始める。約60年前、刑務所の看守主任だったポールが回想する形で物語がスタートする。同じ原作・監督作品の「ショーシャンクの空に」とは違い、少しファンタジーなストーリーなのでリアリストからは少し敬遠されるが、死刑囚舎房という特殊な環境下での様々な人間模様、愛情、友情、勇気、人の心に潜む善と悪が丁寧に描かれており、誠実さや高潔さを学べる作品になっている。本作の試写で、スティーブン・スピルバーグが堪えきれずに4回泣いてしまったと語っているが、あなたは何回泣くだろうか。因みに私は2回泣いた。極力ネタバレは避けたいのでギリギリの範囲で書かせてもらうが、ポールが第2スイッチの命令を下すまでの間(ま)。彼が何を思っていたのかを想像して感じてほしい。その感情こそが、あなたの「心に潜むもの」ではないだろうか。本作を観終えた後、何故かふと「スタンド・バイ・ミー」を観終えた感じに似ていて驚いてしまった。同じ原作者とはいえ、内容も構成も全く違うのに不思議な作品だ。とにかく、心に残る名作に違いない。
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