人としてこの世に生まれてきた以上、知っておかなくてはならない史実がある。それは、国籍や信仰している宗教に関係なくだ。実際にあった出来事を元に制作されたこの映画は間違いなく「知っておかなくてはならない史実」の1つである。歴史や倫理、人道的な事を学べる内容になっていて、それは視聴する1人1人が考えなくてはならないのだが、私がこの映画を通して学んだことは、「人としての生き方、人としてのあり方、人としてどう生きるべきか」という事だ。
この作品を観たことがないという方は少ないと思うが、世界情勢や歴史に詳しいと「ホロコースト」を題材にした映画なら観なくても内容がわかるという方も多いかもしれない。しかし、序盤の「お金、お金、お金」と金儲けが目的だったシンドラーの心情が少しずつ変化していく様や、その大儲けしたお金を何に使ったのか。人が人に対してここまで残虐になれるのか、人が抱える深い深い闇の部分。第二次世界大戦時を題材とした長編映画でありながら、全編通して一切戦闘シーンがないヒューマンドラマなのに、集中して一気に観られる作品になっているので、是非とも多くの現代人に観てほしい作品だ。因みに、この作品は第66回アカデミー賞の7部門で受賞した。映画界からも大衆からも高く評価されていたスティーブン・スピルバーグ氏だったが、それまで手がけた深刻な作品ではあまり評価されておらず、本作において念願のアカデミー最優秀作品賞・監督賞受賞を果たした。
目次
『シンドラーのリスト』キャスト・スタッフ紹介
- 製作国 アメリカ合衆国
- 配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
- 監督 スティーヴン・スピルバーグ
- 脚本 スティーヴン・ザイリアン
- 公開年 🇺🇸 1993年12月15日 🇯🇵 1994年2月26日
- 上映時間 195分
- 出演者
- オスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)
- エミリエ・シンドラー(キャロライン・グッドール)
- イザック・シュターン(ベン・キングズレー)
- アーモン・ゲート(レイフ・ファインズ)
- ポルデク・ペファーベルグ(ジョナサン・セガール)
- ヘレン・ヒルシュ(エンベス・デイヴィッツ)
- マルセル・ゴルトベルク(マーク・イヴァニール)
- ユリアン・シェルナー(アンジェイ・セヴェリン)
- ミラ・ペファーベルグ(アディ・ニトゥザン)
- カジャ・ドレスナー(ミリー・ファビアン)
- ダンカ・ドレスナー(アンナ・ミュシャ)
- メナーシャ・レヴァルトー(エズラ・ダガン)
- リーアム・ニーソン
舞台俳優としてキャリアをスタート。映画監督のジョン・ブアマンに見出され「エクスカリバー」
で銀幕デビュー。本作でオスカー・シンドラーを演じてアカデミー主演男優賞にノミネートされ、
同年には「アンナ・クリスティ」でブロードウェイデビューを果たし、トニー賞にノミネートされた。
「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」では主役のクワイ=ガン・ジンを演じた。
2010年には再びスピルバーグとタッグを組んで、「エイブラハム・リンカーン」を演じることが
決まっていたが、プロジェクトに時間がかかり過ぎ、「58歳になった自分が56歳で死去した
リンカーンを演じるのはふさわしくない」という理由で降板した。その後もさまざまな映画で活躍し、
2008年「96時間」以降は「復讐おじさん」や「最強パパ」としてアクションにも新境地を開いている。
- キャロライン・グッドール
イギリス・ロンドン出身の女優であり脚本家。ブリストル大学で演劇を学び、
卒業後、劇団ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに所属。1990年代から、「フック」、
「クリフハンガー」「シンドラーのリスト」「ディスクロージャー」など、多くの話題作に出演。
- ベン・キングズレー
イギリスの俳優。医師の父と同じく医師になるつもりだったが、19歳の時に「リチャード三世」の
舞台を観て感銘を受け、俳優を志すようになる。初舞台は1966年に、ビートルズのマネージャーが
製作したロンドンの舞台。ナレーターとギターと歌を担当した。因みに、閉演後にジョン・レノンと
リンゴ・スターに音楽の道に進まないかと勧められたらしい。
1967年に劇団ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに招かれ、役者として活躍。
1970年代にはテレビにも多数出演。1982年の映画「ガンジー」でアカデミー主演男優賞を受賞。
その後も様々な映画で活躍している。2001年には「ナイト」の称号を与えられた。
- レイフ・ファインズ
イギリスの俳優、映画監督、映画プロデューサー。舞台と映画で活動している。王立演劇学校で
舞台俳優としてのキャリアをスタートさせ、1988年にロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに参加。
本作で、悪役のSS将校アーモン・ゲートを演じ、英国アカデミー賞 助演男優賞を受賞、アカデミー
助演男優賞にノミネートされた。1995年にはブロードウェイの「ハムレット」で主演をし、トニー賞
を受賞した。やはり最も知られているであろう役は、ハリー・ポッター最大の敵で、最も恐ろしい闇の
魔法使いである「ヴォルデモート」だろう。2005年公開の「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」
からその後のシリーズ最終章まで出演した。その後も様々な映画で活躍し、2012年には
『007 スカイフォール』に出演。そしてジュディ・デンチ演じるMの後任としてシリーズに
出演していく。
- エンベス・デイヴィッツ
アメリカのインディアナ州で生まれたが、9歳の時に祖父母の故郷である南アフリカ共和国へ移住。
プレトリアにある高校を卒業後、グラハムズタウンのローズ大学で演劇を学ぶ。
21歳の時、ケープタウンで上映された「ロミオとジュリエット」のジュリエット役で役者デビュー。
英語とアフリカーンス語を使い分けながら演技ができるバイリンガル女優として多数の舞台に出演し、
アフリカ国内の映画やテレビで活躍しキャリアを重ねる。1992年にロサンゼルスへ活動の拠点を変え、
サム・ライミ監督の「死霊のはらわたⅢ」に出演。その後、本作や様々な話題作に続々と出演し、
ハリウッド女優としての地位も着実に築いている。
Melody of Movieの評価
91点
■各レビューサイト参考
映画.com:4.2
Yahoo!映画:4.36
Filmarks:4.1
みんなのシネマレビュー:3.9
※みんなのシネマレビューは10段階→5段階評価に換算しています
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『シンドラーのリスト』あらすじ
第二次世界大戦中、ドイツ軍が制圧したポーランドのクラクフという街で、戦争ビジネスで
一儲けしようと企む男がいた。それはドイツ人でナチの党員であり、実業家でもあった
「オスカー・シンドラー」だ。社交性に富んでいた彼は、派手な接待を繰り返しながらドイツ軍の
将校や軍人達を取り込み、安い賃金で働かせることが出来るユダヤ人を雇って工場を経営する。
有能なユダヤ人会計士イザック・シュターンに工場の経営を任せ、次々とユダヤ人隔離居住区の
ユダヤ人を安価で雇い入れ、自らの事業を拡大させていった。しかし、ドイツの戦況が悪化するにつれ、
ユダヤ人への扱いが更に酷くなる。強制収容所に所長として赴任してきたナチス親衛隊将校の
アーモン・ゲート少尉を筆頭に、ドイツ軍のユダヤ人に対する非人道的な行為にシンドラーの心は
大きく揺れ動きはじめる。クラフク・ゲットー(隔離居住区)やクラフク・プワシュフ強制収容所で
日常的に行われている殺戮によって、会計士のシュターン初めシンドラーの工場で働くユダヤ人に
危機が迫る。そんな中、全ユダヤ人があの「アウシュビッツ強制収容所」に移送される事を知った
シンドラーは、あるリストの作成を決意する。
『シンドラーのリスト』見どころ
本作は内容が内容だけに「見どころ」と言ってしまっていいのか悩むところではあるが、強いて言えば
シンドラーの心情の変化だろう。単なる気持ちの移り変わりではなく、心の揺れや心のブレといった
「弱さ」が細かく描かれている。そういう所に注目していただければ、決して聖人君子ではない
シンドラーの人間らしさを感じ取れるのではないだろうか。また、本作品は配給会社からカラーでの
撮影を要求されていたにも関わらず反対を押し切り、現代のシーンを除いてほとんどモノクロで撮影
されている。この長編をモノクロで最後まで観ることが出来るのだろうか?と不安になるかもしれないが
安心してほしい。敢えてモノクロにする事で現代と過去のコントラストが際立ち、没入感を得られる。
因みに、冒頭とラストの現代はカラーになっているが、本編の1部分だけ色がついている箇所がある。
それは画面全体がカラーになるのではなく、ある「もの」にだけ色がついている演出だ。画面の中に
違和感があるので見逃す人はいないと思うが、その色にも注目してほしい。
「シンドラーのリスト」主要登場人物紹介
- オスカー・シンドラー / リーアム・ニーソン
モラビアのスビタビ(当時のオーストリア・ハンガリー君主国の州)で生まれる。ドイツ系の
カトリック教徒で、1936年にドイツ国防軍諜報部で働き始め、1939年2月にナチ党に加わる。
ドイツ軍のポーランド侵攻に伴い、クラクフに移住。占領下のポーランドで、商取引から
「ユダヤ人を駆逐する」というドイツの計画を利用し、1939年にユダヤ人が所有する琺瑯(ほうろう)
鉄器メーカーを買い取って「エマリア」と呼ばれた工場を建設した。他に2つ工場を運営していたが、
ゲットーからユダヤ人の強制労働者を雇用したのはエマリアだけだった。派手な生活を好む実業家で、
救世主と呼ばれるには程遠い人物だった。
- エミリエ・シンドラー / キャロライン・グッドール
オスカー・シンドラーの妻。幼少の頃は自然と動物が大好きで、牧歌的な少女だった。
また、村の近くに数日間キャンプするジプシーにも興味を持っていて、ジプシーの様な遊牧民の
ライフスタイル、音楽に魅了されていた。1928年にシンドラーと初めて出会い、約6週間の
付き合いの後、2人は1928年3月6日にシンドラーの故郷であるスビタビ郊外で結婚。
戦後はシンドラーと共にアルゼンチンへ移住。事業に立て続けに失敗したオスカーはエミリエを
捨ててドイツに戻ったが、離婚はしていない。しかし、1974年にオスカーが亡くなるまで2度と
会うことはなかった。1993年、本作の制作中にエルサレムにあるオスカーの墓に、彼女を演じた
「キャロライン・グッドール」と共に訪れた。その際にエミリエが呟いた言葉『ついに私たちは
再会しました…。私は何の返事ももらっていません、あなたがなぜ私を捨てたのかわかりません…。
でも、あなたが死んでも、私が老いても変えられないのは、私たちがまだ結婚しているということ、
これが神の前での私たちの姿です。私はあなたにすべてを許しました、すべてを・・・』
ベルリン郊外の病院にて93歳で死去。
- イザック・シュターン / ベン・キングズレー
ユダヤ系ポーランド人の会計士。「イツァーク・シュテルン」とも表記される。シンドラーの会社の
会計士として知られるが、実際はクラクフの織物会社「ブーフハイスター商会」の会計主任。
クラフクのゲットーが解体された後はプアシュフ強制収容所内のオフィスで働いていた。
シンドラーとの関係は、当初は単なるビジネスパートナーだった。しかし、時間の経過と共に2人の
間に深い友情が芽生えていった。1969年シュターンが亡くなった時、シンドラーが埋葬を手配し、
集まった友人達の中で人目も憚らず号泣した。
- アーモン・ゲート / レイフ・ファインズ
ドイツのナチス親衛隊将校。第二次世界大戦中はプワシュフ強制収容所の所長を務めた。
シンドラーの友人でありライバル。身長192センチ、体重120キロの巨漢。ナチス親衛隊の
中でも突出して残忍な男だった。1943年、彼が指揮したクラクフのゲットー撤去作業では、2日で
約1000人が殺され、4000人が追い出された。そしてその多くは、アウシュビッツ強制収容所に
送られた。各地のゲットー撤去作業での功績によって、プワショフ強制労働収容所の所長へと出世
したゲートは、この収容所で更に死の嵐を巻き起こした。プワシュフで生き残った方の証言によると、
『気に入らない奴がいたら髪を鷲掴みにしてその場で撃ち殺した。』と語られており、またゲート
のユダヤ人書記は『ゲート所長が口述筆記中に突然窓を開け、囚人をライフルで撃ち殺し、何事も
なかったように「どこまでだったかな?」と言って口述筆記を再開した』と証言している。
戦後の裁判では、プワショフ強制収容所の件だけでも8000人の死の責任を追求された。
- ヘレン・ヒルシュ / エンベス・デイヴィッツ
クラクフ・プワシュフ強制収容所での生活を余儀なくされていたヘレンは、所長のゲートに
気に入られ、収容所内にあるゲートの屋敷でメイドとして働きはじめる。そこで同じ名前の
ヘレン(ヘレン・ジョナス・ローゼンツヴァイク)という名のポーランド人のメイドと共に、
約2年間地下室で寝起きをしてゲートの屋敷の家事を担っていた。異常なサディズムを有する
ゲートがバルコニーからユダヤ人を撃ち殺したり、些細な理由で処刑を命じたりするのを
日常的に目の当たりにしており、屋敷での仕事は常に恐怖と苦痛の連続だった。
また、ローゼンツヴァイクと共に暴力を振るわれることもあったという。戦後、ゲートの裁判が
行われた際は、法廷でゲートの蛮行を証言した。
『シンドラーのリスト』ストーリー・感想
冒頭、まずカラーで始まり、そして徐々に白黒へ切り替わる。今から過去の出来事が語られるのだなと、モノクロの世界へ違和感なく引き込まれる。序盤、シンドラーのセレブリティな振る舞いが暫く続くのだが、登場人物紹介の箇所で『派手な生活を好む実業家で、救世主と呼ばれるには程遠い人物だった。』と書いたが、この序盤のシーンを見ていると「なるほどな」とわかっていただけるだろう。この一連の行為は、将校達を取り込むためだ。結果的にそれが成功し、潰れた工場を買い取って開設した琺瑯(ほうろう)容器工場や軍需工場の事業を拡大させていった。
そしてついに、あの冷酷で残忍なSS将校のアーモン・ゲート少尉がプワシュフ強制収容所の所長としてクラフクへ赴任してくる。戦況が進むにつれ、ユダヤ人への扱いが更に厳しくなっていく。それと同時に、金儲けにしか関心がなかったシンドラーの心境に大きな変化が生じていく。自身の大事な金儲けの駒を連れて行かれては困る、殺されては困るという主張を建前にして、ユダヤ人達を出来る限り保護しようとした。オスカーがゲートの知人であったことがある意味で幸運だったものの、シンドラーの庇護(ひご)にも限界があった。ここで少し考えてみてほしい。会社内でも学校内でもいい。軽蔑する相手と笑顔で肩を組む。自身の置かれている立ち位置や立場上、仕方なく本心を押し殺す。そして嫌な奴と酒を飲みながら大笑いをし、共にイジメや虐待に加担するフリをして実は命を救う。なかなか出来る事ではないだろう。そういったシンドラーの心情、そこに至るまでの変化にも注目して観ていただきたい。冗長(じょうちょう)だという本作への意見も稀に見かけるが、時間をかけて丁寧に描いているからこそ届く想いがあると思う。
例えば、私はサッカーが大好きなのだが、試合のハイライトを観れば結果もすぐわかるし、良いところだけを観られて確かに効率的ではある。しかし、前半45分、後半45分、計90分間の緊迫感を味わうのがサッカーの醍醐味だと思う様に、映画もまた一見無駄に見える演出や描写がストーリーに深みや余韻を与えてくれていると思う。ウクライナ系ユダヤ人の家庭に生まれたスピルバーグ監督の真骨頂を目と心に焼き付けてほしい。そして冒頭でも述べた、私が本作を観て学んだ事は『人としての生き方、人としてのあり方、人としてどう生きるべきか』だが、あなたは何を学んだのか。観終えた後に考えてみてほしい。