舞台『刀剣乱舞』(通称刀ステ)は、大人気ゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』を原作にした演劇作品。
キャラクターの再現度に加え細かく伏線の張られた重厚なストーリーが特徴で、2.5次元作品の代表格と言われる超人気作です。
観劇が趣味の筆者ですが、恥ずかしながら刀ステは過去作を2本ほど映像で観たレベル。
原作ゲームも未プレイなので、これといった推しキャラもいませんでした。
そんな筆者が2021年1月10日~上演された舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 –大坂冬の陣–で、刀ステ初観劇。
観劇前は正直「刀ステ=ストーリーが重くて難解」というイメージや「推しキャラがいないと楽しめないのでは?」という不安もありました
……が、良い意味で予想を大きく裏切られました!
今回は、刀ステ初心者だった筆者が舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 –大坂冬の陣–の面白さについて思う存分語らせていただきます!
目次
舞台『刀剣乱舞』「天伝 蒼空の兵 –大坂冬の陣–」のここが面白い!
まるでアトラクション!?圧倒的スケールのステージ
今回の公演でまず触れたいのは、IHIステージアラウンド東京という特殊な劇場。
簡単にいうと円形のステージが客席をぐるりと囲む構造になっています。
刀ステでは四方それぞれ異なるセットが組まれて、客席が回転することで場面転換が行われていました。場面転換ごとのセットの移動や組み換えが必要ないわけなので、大掛かりなセットをいくつも組むことができます。
終盤ではそのステージがフル稼働!360度全てのステージで全刀剣男士の戦闘が繰り広げられ、観客は回転しながらその戦いぶりを堪能します。
「あっちで山姥切国広が戦ってるのに、こっちには加州清光が……全部観たい!!目が足りない!!」
という何とも贅沢な観劇体験でした。
そして、背景のスクリーンももちろん360度で超巨大。そこに映る映像の没入感も初体験でした。
とあるシーンでは、スクリーン映像だけでまるで自身が鳥になって空を飛んでいるような不思議な感覚も。
まるで有名テーマパークのアトラクションのようでした。
舞台『刀剣乱舞』はIHIステージアラウンド東京というハコ(劇場)の中で、演劇に留まらないエンターテインメントに仕上がっていたのです。
新型コロナウイルスの影響で劇場へ足を運ぶのを躊躇する時期ではありましたが、この感動的なステージ体験があったからこそ、心から「劇場へ行って良かった」と筆者は思えました。
重厚なストーリーと飽きない演出
舞台『刀剣乱舞』の魅力といえばストーリーと演出。
キャラクターの背景やこれまでの流れを知らなくても、心に刺さる魅力で溢れています。
※以下は内容のネタバレを含みますのでご注意ください。
大切な人を「失う」為に戦う―刀剣男士の残酷な宿命
刀剣男士達は何のために戦うのか?
それは「歴史を忠実に守る」ため。
たとえ愛する主が死に、自らが炎に焼かれた残酷な歴史であってもです。
その宿命の残酷さは1作目である舞台 『刀剣乱舞』~虚伝 燃ゆる本能寺~でも痛いほどに感じました。
今回も刀剣男士達は、かつての思い出と“歴史を守る者”として背負う宿命との間で悩み苦しんでいます。
特に印象的だったのは、主人公の一期一振(いちごひとふり)がかつての主である豊臣秀頼に自らの素性を明かしたシーン。
「豊臣は…豊臣は負けるのか?」
「……はい。私はその歴史を守るために……ここに来たのです」
つまり一期一振は「貴方が死ぬ未来を守るために自分はここにいる」ということを伝えたのです。
一期の表情からにじみ出る悔しさとやるせなさ、並々ならぬ覚悟。そして震える声には思わず涙がこぼれました。
壮大なステージで繰り広げる演目でありながら、舞台『刀剣乱舞』はこういった繊細な表現も散りばめられています。そこはむしろ劇場ではなく映像でこそ堪能できるでしょう。
もう一つ紹介したいのは、今回の敵として登場する弥助(やすけ)という存在。
2017年の舞台『刀剣乱舞』~ジョ伝 三つら星刀語り~にも登場していた男ですが、筆者は今回初見でした。
彼は敬愛する織田信長の復活という目的のため刀剣男士達に立ち塞がり、そして最後はその野望の為自らの命をも差し出します。
かつて奴隷として日本へやってきたという彼は、刀剣男士を「歴史の奴隷」と吐き捨てました。
歴史を守る為に戦い、かつての主の死をもいとわない刀剣男士達。その一方で主を守る為に命をも投げ出す弥助……。
本当の悪とは、正義とは一体何だろう?
私達観客はその問いを投げかけられるのです。
刀剣男士達の行いは本当に正しいのか?本当に滅ぼされるべきなのはどちらなのか?
舞台『刀剣乱舞』の世界には常に戦いがあります。
けれど完全な悪も完全な正義も存在しません。そこが刀ステの人々を引きつける最大の魅力なのかもしれません。
楽しい!美しい!「魅せる」殺陣
実は殺陣やアクションには疎い筆者。
好きな作品でも長い戦闘シーンが退屈に感じることもあるのですが、今回の舞台『刀剣乱舞』の殺陣は全く飽きませんでした。
特に終盤、刀剣男士達が大勢の敵を相手に1人ずつ立ち回る場面。広いステージや足場を目いっぱい使って繰り広げられる殺陣は、まるでダンスのように華やかで「もっと見ていたい!」と思うほど。
こういった「魅せる」殺陣の演出は、時代物に抵抗のある初心者でも楽しめるポイントです。
舞台『刀剣乱舞』「天伝 蒼空の兵 –大坂冬の陣–」を初心者が楽しむコツ
刀剣乱舞の設定や刀剣男士については、舞台中に説明されるのではさほど予習する必要はありません。
ただ、劇中に登場する歴史については押さえておいた方が良いでしょう。
日本史が好きな方にとっては今さら?な内容ですが、今回の冬の陣公演で特に重要な2点を紹介します。
【大坂の陣】
大坂城周辺にて行われた徳川家康と、豊臣秀吉亡き後の豊臣家との戦い。この戦いで豊臣秀吉の息子である豊臣秀頼が破れ、豊臣家は滅亡。
一期一振や弟の鯰尾藤四郎らはこの戦いで豊臣家と共に焼け落ちました。 先に起こったのが「冬の陣」、翌年が「夏の陣」です。
【真田丸】
大坂の陣で豊臣方についた真田信繁(後の真田幸村)が築いた出城。
大河ドラマのタイトルにもなり言わずと知れた存在ですが、ずっと船のことだと思っていました(笑)真田丸はお城です!刀ステがなければ船と勘違いしたままだったかもしれません……。
【まとめ】刀ステはどこから見ても面白い!
難解なイメージだった舞台『刀剣乱舞』ですが、原作をほとんど知らなくても十分に楽しめました。
ダイナミックなステージ構成にワクワクし、繊細な演技に涙し、最後にはタイトルにもある蒼空のような爽やかな感動に包まれます。
誰もが引き込まれ、2.5次元の枠を超えたひとつの演劇として楽しめる。そこが舞台『刀剣乱舞』が根強い人気を誇る理由なのでしょう。
もちろん、これまでの流れを知っているからこそ考察も生まれ、心動かされるポイントが何倍にも膨らむことも事実。
刀ステ沼に片足突っ込んでしまった筆者は、動画配信で未視聴の過去作品をじっくり見直すことにしました。DMM動画では過去作品全話配信中なので1作目から見直すも良し、気になった作品から見てみるのも良し。
そして「冬の陣」公演はそれだけでも一つの作品としてしっかりと成立していますが、やはり続きが気になるもの。
後編である舞台『刀剣乱舞』无伝 夕紅の士 –大坂夏の陣–は2021年4月11日に開幕しました。筆者は6月27日の大千秋楽のライブビューイングで観劇予定です。
「冬の陣」から「夏の陣」へ引き継がれた舞台『刀剣乱舞』の物語がどのような終末を迎えるのかが楽しみです。