2019月8月に上演された「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~葵咲本紀(きしょうほんぎ)~」。
2017年に上演され評価も高い『刀剣乱舞』 ~三百年(みほとせ)の子守唄~の地続きともいえる作品です。
今作をより楽しみたい方は、ぜひ『みほとせ』から続けてご覧になることをおすすめします。もちろん今作から始めてみるという方にも楽しんでいただけるように、今回は葵咲本紀の魅力を力いっぱい紹介します!
目次
葵咲本紀のあらすじ
葵咲本紀の舞台は慶長5年、徳川家康が関ケ原の戦いで天下を統一する直前。
『みほとせ』の任務も進み、家康の元に残っているのは井伊直正に扮する千子村正と本田忠勝に扮する蜻蛉切の二振りのみとなりました。
伏見城には物吉貞宗扮する鳥居元忠が残っていますが、史実ではこの後の「伏見城の戦い」により戦死することになっています。
腹心中の腹心である元忠のピンチに顔色一つ変えず、「間に合わん」と切り捨てるような態度の家康に不満を募らせる村正。
長男の信康の一件以来、「嫌いデス」と言い切るほど家康に対して抱えきれぬ思いを抱くのでした。
『みほとせ』の時とは別人のように変わってしまったかのような家康。
そんな家康に憎悪の念を燃やす人物がもう一人。
兄である信康を奪われた、次男の秀康です。
双子という境遇から、生まれた時から冷遇されてきた秀康は「兄を自分から奪った」という家康に対する憎悪の念から、自分の刀に取りつかれてしまいます。
この刀、新たに任務についた篭手切江が尊敬する「先輩」であることもわかりなんとか助けようと奮闘するのだが…
葵咲本紀の見どころについて
ミュージカルとしての出演陣の質の高さ
『葵咲本紀』にも出演している『みほとせ』からの続投は二振り。
太田基裕さん演じる千子村正とspiさん演じる蜻蛉切。
村正を演じる太田さんは、歌唱力も高く、今作では身を削るような熱演をされていて、本当に素晴らしい俳優さんです。spiさんも堂々とした風格で刀ミュに安心感を与えてくれる大黒柱のような存在。
このプロ意識の高い二人がいることで、新刀剣のメンバーも刺激を受けたとインタビュー記事にもありました。
特に村正役の太田基裕さんは、今作では熱演のあまり帰京したさいダウンしてしまったほど。
続投組以外の4振りもそれぞれに個性が光っていて、刀ミュのレベルの高さには驚かされてばかりです。
田村升吾さん演じる篭手切江は、アイドルをめざし練習に励む短刀で歌、ダンス、とも一生懸命さが伝わる素直な性格。見ているこちらも自然と応援したくなる気持ちにさせられます。
明石に絡まれた際にも、相手をまっすぐ見て真剣に受け答えしている姿には好感しか持てませんでした。瞳がキラキラ輝いていたのも印象的でした。
御手杵を演じる田中涼星さんは、驚異の股下97cmという超絶スタイルの持ち主。2.5次元と言うより、2次元そのもの。歌えば少しハスキーがかった声でそれがまた青年らしくて、ちょっと自信がない御手杵のキャラクターにピッタリマッチしていました。
仲田博喜さん演じる明石国行は出演者の中で一番のアイドル感があると感じました。「やる気ないのが売りなんで~」と愁いを漂わせつつ、にじみ出るキラキラ感。やる気ないといいながら、戦えば強く、意外と熱い心を抱えている明石国行役にこれ以上はないほどはまり役だと思います。
そして最後は、本作最大の衝撃といっても過言ではない鶴丸役の岡宮来夢さん。
本作の鶴丸は本丸の中でも古参の役どころでこれを、若干二十歳の岡宮さんがどう演じるのが見るまでは期待と不安が半分ずつと言った感じでした。
しかし主に舞を献上するシーンでは度肝を抜かれます。堂々とした立ち振る舞いもさることながら、幼い顔に反した男っぽい歌声にはただただ驚かされました。
『みほとせ』から続投の村正の変化と、蜻蛉切との強い絆
今作、葵咲本紀の最大の驚きは「妖刀」村正の変化ではないでしょうか。
史実の千子村正は徳川家に何度も災いをもたらした刀として、忌み恐れられてきました。
村正自身も「切ってしまうかもしれませんよ」と家康に対して一歩引いた姿勢で接しているように見えました。
途中、家康の家臣井伊直正として家康に遣えるようになりますが、信康との交流が村正を大きく変えます。
葵咲本紀の冒頭で、『みほとせ』でもたびたび歌われていた「かざぐるま」を歌う村正の手にはトリカブトが握られています。トリカブトは『みほとせ』で信康が石切丸に送った花です。
村正の「信康を死なせた家康が許せない」という村正が「感情に支配される」ことを心配している様子の蜻蛉切。
今作、村正が「人間っぽい」と特に感じたシーンがあります。
時間遡行軍と遭遇した際、それまで他の刀剣たちに「冷静になりなさい。戦闘中ですよ」と先輩刀剣らしく冷静にふるまっていたのが、信康を殺した(とこの時点では思っている)検非違使が現れた途端に我を忘れてしまうシーン。
とても人間くさい。
信康の仇と我を忘れて検非違使に切りかかる姿は「もはや人間なのでは」と思ってしまうほど心を感じるシーンでした。
もう一つは検非違使と対峙するも負傷して、目覚めた後の蜻蛉切との会話。
『みほとせ』で同じ任務にあたった仲間を思い出し、「強かったですね、誰かのために戦える人は」とつぶやくシーン。村正は「誰かのために戦える仲間の強さに憧れを抱いているように感じられました。自分だってさっきまで信康のことを思って必死に戦っていたのに。
徳川の忠臣であったため、秀康になかなか刃を向けることができない蜻蛉切や御手杵の代わりに「妖刀」としての役割を一人で引き受けようとする姿は痛々しくすらありました。
そんな村正に「自分だって村正だ」と告げる蜻蛉切。
そしてそんな仲間たちのことをお互いに「家族」「ファミリー」と呼びあうほどの村正の心の変化には本当に見ているこちらも胸打たれました。
お互い信頼しあって、知らず知らずのうちに支えあっているんでしょうね。
この後の時間遡行軍と遭遇し、足手まといになりたくないから自分を置いて逃げろという村正に対し、蜻蛉切が「俺がお前を置いて逃げる?馬鹿々々しい。そのようなこと二度と口にするな!」と一括するシーンは本当にしびれます!
「存在」というテーマについてさらに掘り下げられている
「つはもの」では三日月が「歴史を守るために史実に介入している」という事実が明らかになりました。今作でも三日月が歴史に介入し、歴史上の人物に接触していたことが判明します。
この事実に厳しく反応したのが明石国行でした。歴史を守るために歴史に介入していることに「歴史変わってもうてるやん」と腑に落ちない様子。
その後も、時間遡行軍に変貌してしまった「先輩」を助けようとする姿に「歴史に名を遺した価値のあるもの、だからなんとかして助けたい。だとしたらこいつらは、歴史に名を残さなかった価値のないもの、だから壊しても構わない。そういうことですか?」と明らかに怒りを感じている。
「全てを救えないなら、誰も救えてないのと同じだ」
と篭手切江に詰め寄るシーンでは、自分に怒っているようにも、三日月に対して怒っているようにも見える。
明石は「後世に名を残せなかった存在」に思い入れがあると感じました。
この「存在しないかもしれない問題」は刀剣男士にとっては避けて通れない問題。
御手杵が歴史の中で燃えて消失してしまったことから「歴史から消されるってどんな気分だ」と同じく歴史から消された貞愛に尋ねるシーン。ここでも「存在」というテーマについて語られていますが、「俺が覚えていてやるからよぉ」の一言に御手杵は救われたんじゃないかなぁと思いました。
二人のやり取りの中で歌われる「影と響き」は二人の気持ちを表している名曲なのでぜひ聴いてみてくださいね。
葵咲本紀は何の配信サービスで観れる?
葵咲本紀を含め、刀剣乱舞のミュージカル、いわゆる刀ミュ作品についてはdアニメストアでの観賞がおすすめです!刀ステ作品についてやDMMでの配信のとは何が違うか?など下記記事で解説していますので、是非ご確認ください。
https://mechaceleb.com/haishinbest/
まとめ
この先もどうなっていくのか、ますます目が離せない刀ミュの世界。葵咲本紀は何度見ても新たな発見や、謎があり本当に奥が深い作品です。一言では語りつくせない魅力があるので、ぜひ興味を持たれた方は自分の目で確かめてみてくださいね。
葵咲本紀はDMM.comやdアニメストアでも配信されているので、よろしければチェックしてみてください。それでは。