【ネタバレあり】最恐で最狂のホラー⁉︎『ヘレディタリー/継承』のあらすじ・レビューと評価まとめ

 「ミッドサマー」(19)で知られるアリ・アスター監督の最恐ホラー「ヘレディタリー/継承」(18)。公開当時から「現代ホラーの頂点」と、絶賛の嵐だったという本作のあらすじや解説、オリジナルレビューを紹介します。

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あらすじ(ネタバレあり)

 グラハム家の祖母・エレンが亡くなり、一家は葬儀を行っていました。エレンと疎遠だったミニチュアジオラマ作家の母・アニーは複雑な心境で、グループカウンセリングに行くことに。彼女は、解離性同一性障害で人を操るのが得意だった母に娘のチャーリーを差し出してしまったことを後悔していたのです。さらに自身の父は精神を病んで餓死、兄は自殺していることも明かし、家族をこれ以上苦しめたくないと嘆きます。

そんなある日、アニーは息子のピーターから友人宅でのパーティーに行きたいと持ちかけられます。チャーリーも連れて行くことを条件に車を貸しますが、そのパーティーでナッツを食べたチャーリーはアレルギー発作を起こしてしまいます。ピーターが焦って病院に連れて行く途中、呼吸困難で窓の外に顔を出したチャーリーの頭が電柱にぶつかり。憔悴しきったピーターはひとり自宅に戻り、翌朝首のない死体を見つけた母の叫び声がグラハム家に響くのでした。

 これをきっかけに一家はますます崩壊。アニーはカウンセリングで出会ったジョーンという女性に降霊術を勧められます。幼い孫を亡くしたというジョーンが実際に彼女の目の前でやって見せると、その儀式は本物だと確信。ピーターと夫のスティーブを無理やり起こしてチャーリーの霊と交信してみると、実際にグラスが動いたりロウソクの火がついたりと変化が起こりました。しかし、その後ピーターの精神状況は悪化。アニーもチャーリーのノートにピーターの泣き顔が描かれているのを目撃し、良からぬ力が働いていることを悟ります。

 ピーターは幻覚に悩まされた末、ついに自分で顔面を強打してしまいました。一方、エレンの遺品を調べるアニーは、カルト教団の長のような姿をしたエレンの写真を見つけます。さらに写真にはジョーンの姿もあり、彼女が悪魔崇拝の仲間だったと知ってパニックに。天井裏からは、首のない母の死体まで見つかりました。スティーブにノートを燃やして事態を治めてほしいとお願いするアニーでしたが、スティーブの体は一瞬で炎に包まれてしまいます。そうして言葉を失うアニーにも、やがて何かが憑依するのでした。

 自分の部屋で目を覚ましたピーターは、リビングで父の死体を発見。すると、全裸の男や天井を這う母の姿をした何かに襲われて、必死で天井裏に駆け込みます。そこには儀式をした痕跡があり、いつの間にか天井に浮遊していた母がワイヤーで自らの首を切り落としていて。慌てて窓から外へ飛び出ると、倒れるピーターの体に光が溶け込みました。その後、首のないアニーがツリーハウスの中へと姿を消すのを見てピーターも向かうと、中には教団員たちの姿がありました。チャーリーの頭を飾った像の前にひれ伏す、首のないエレンとアニーの姿。教団員たちはピーターに王冠を被せると、「あなたはペイモンになった」と告げ、「ペイモン万歳」と声を上げるのでした。

Melody of Movieの評価

80点

この映画は間を持たせるのがすごく上手で、ずっと緊張しっぱなしでした。結構トラウマになるレベルで嫌な気持ちになりますが、それこそがこの映画の評価すべきポイントになるかと思います!

■各レビューサイト参考

映画.com:3.4

Yahoo!映画:3.2

Filmarks:3.6

みんなのシネマレビュー:3.09

※みんなのシネマレビューは10段階→5段階評価に換算しています

キャスト・スタッフは?

 監督を務めたのはアリ・アスター。2011年に短編映画「TDF Really Works」でデビューした彼にとって、本作は長編映画デビュー作でした。にも関わらず「21世紀最高のホラー映画」と高く評価され、週末興行収入ランキングでは初登場4位を記録。また、インタビューでは本作をホラーのつもりで撮ったのではなく家族映画だと認識していることを明らかにし、実際に数多くの家族映画から影響を受けたのだと語っています。

 母・アニー役にはトニ・コレットが。彼女は主演した「ミュリエルの結婚」(94)でゴールデングローブ賞主演女優賞に初ノミネートされ、「シックス・センス」(99)ではアカデミー助演女優賞の候補に挙がった経験を持つ実力派です。他にも「リトル・ミス・サンシャイン」(06)などの名作で活躍していますが、本作では製作総指揮まで務めていることにも注目です。

 一番の被害者・ピーターを演じたのはアレックス・ウルフ。1997年生まれの若手俳優で、6歳の頃から子役として活躍しています。スタジオ・ジブリの宮崎吾朗監督作「コクリコ坂から」(11)では、英語吹き替え版で声の出演も果たしました。M・ナイト・シャマラン監督の最新作「オールド」(21)への出演が記憶に新しいでしょう。

 不気味な雰囲気をまとうチャーリーは、当時14歳だったミリー・シャピロが熱演。本作が初の映画出演でした。そんな彼女は、2014年にミュージカル「マチルダ」でトニー賞最年少受賞の経験を持つほか、姉のアビゲイルと共にアルバムを出すなど歌手としても活躍しています。彼女は先天的に骨や歯などに影響を及ぼす鎖骨頭蓋異形成症を患っており、その認知度を高めるために自らTik TokなどのSNSで発信しているようです。

悪魔・ペイモンとは?

 劇中でエレンら教団員たちは、悪魔・ペイモンの復活を祝っていましたが、ペイモンとは何者なのでしょうか。ラストシーンでジョーンは「地獄の8王の1人。我らは三位一体を拒み、偉大なる王ペイモンのために祈る」と述べていますが、17世紀から伝わる作者不明の魔術書「レメゲトン」の第一書「ゴエティア」には、実際にその名前が記述されているのだとか。映画オリジナルではないのですね。

 その書には72人の悪魔が列挙されていて、ペイモンは9番目に登場する地獄の王。キリスト教において、堕天使(=悪魔)の長であるルシファーに最も忠実な僕でした。

 さらに、天使や悪魔を呼び出し願いを叶える方法が記載された「アブラメリンの聖なる魔術の書」でも、8人の下位君主のうちの1人として紹介されています。かなり有力な悪魔だったそうですが、ジョーンが言っていた「地獄の8王」とはこの事でしょう。

その姿は女性の顔をした男性だとされていて、王冠を被りラクダに乗って現れるのだとか。また、科学に関するあらゆる知識を与える能力を持っており、人々が召喚者の意思に従うよう操ることもできたと言います。王冠を模したような印章も劇中のものと一致します。そういえばカウンセリングのシーンでアニーは「母が人を操るので」と言っていましたが、エレンがペイモンの召喚者だったことの伏線だったのですね。

 ちなみに、劇中ではグラハム家の壁に書かれた「SATONY」や「ZAZAS」などの文字が度々映りますが、その全ては降霊術に使われるもの。例えば「SATONY」は死者と交信するための言葉で、「ZAZAS」は悪名高いオカルティスト・クロウリーという人物が悪魔を呼び出す際に使った呪文から取ったワードです。悪魔崇拝の詳細が詰め込まれていますよね。

母が作るミニチュアの謎

 母・アニーがミニチュアジオラマ作家だという設定も気になるところ。本編のファーストカットもミニチュアグラハム家の中のピーターの部屋から始まりました。日常のさまざまな場面をミニチュアにするアニーの作業はチャーリーの死後でさえも続き、首のない娘の死体までも再現します。ただ単に、彼女の異常な精神状態を表す描写の1つだったのでしょうか。

 劇中では、ミニチュアのグラハム家越しにアニーの視線が映し出される場面が何度か登場しました。これは、一家の外に第3者の視点が存在することを意図していたのではないでしょうか。つまり、人間の力の範疇では解決できない出来事が起こる世界を表していたのだと考えられます。そういえば冒頭でも、「選択肢があれば悲劇性は高まるか」という議論をするピーターのクラスの場面がありましたよね。そこで、生徒の誰かが「避けられない運命なら絶望的な仕組みの中の駒でしかない」と発言しています。その駒とは、まさにピーター自身を表しているようにも思えます。エレンの血が流れている唯一の男性であったためにペイモンに捧げられたという避けられない運命の途中にいることを示唆していたのではないでしょうか。

チャーリー出生の秘密とは?

 一方、早々に姿を消すチャーリーにも多くの謎が残っています。エレンに男の子になれと言われて育った彼女は、エレンやカルト教団にとってペイモンを宿らせるための容れ物だったのでしょう。アニーがカウンセリングで話している通り、エレンは第一子であるピーターには干渉できなかったため、すぐにペイモンを復活させるのは不可能でした。しかし、その後生まれたチャーリーには不干渉ルールは適応されなかった。きっと生まれてくる前から儀式を行い、彼女にペイモンを宿したのではないでしょうか。その証拠にチャーリーは生まれた時に泣かなかったといいます。

さらに、舌をコッと鳴らす不気味な癖もペイモンの存在と繋がっています。チャーリーの死後、ピーターはこの幻聴を聞くようになりますよね。学校で顔面を強打する場面の直前にも、ピーターだけにコッと音が聞こえています。そしてついには、屋根裏の窓から飛び降りてピーターの体内に光が溶けこんだ後、自らも同じ音を鳴らしたのです。この時、ペイモンはやっとピーターの体に入ることが出来たのだと考えられます。

となると、チャーリーの死も偶然とは思えません。よく見ると、頭がぶつかった電柱にはあのマークが。教団は最初からチャーリーの体内からペイモンを切り離し、ピーターに入れ込むことを目的としていたのです。そのために全てが組まれていたのだと思うとゾッとしますね。

レビューと解説

 悪魔崇拝を描いた話の中でも群を抜いて、ありとあらゆる設定が詳細まできめ細やかに作り込まれているのが印象的でした。壁に書かれた文字の伏線なんかはまさにその1つで、もはや観客に気づいてもらうために映しているとは思えません(笑)。監督の狂気を感じます。

個人的には日本人にとって悪魔に対する恐怖は馴染みがないように思っていて、多くのアメリカンホラー(悪魔を描いたもの)はゾッとするというよりもお化け屋敷的な感覚でエンターテインメントとして楽しむものだと思っている節がありました。しかし本作は、悪魔と対決して勝敗を決めることをゴールとはしていません。それどころか最初から抗えない力としてこの世界に存在しており、私たち観客は、その中で踊らされる人間の物語を覗いているだけなのです。その感覚は、「リング」や「呪怨」などのJホラーで描かれてきた滅ぼすことなど不可能な幽霊を見ているのに近いものがある気がします。そういう意味で親近感が湧いたため、好感が持てたのかもしれません。

例えば、悪魔ペイモンの存在は光で描かれていましたよね。もし悪魔を直接的に描写していたとしたら、完全にフィクションだと思うことが出来ると思います。しかし、私たちの日常にもありそうな光景として描いていることで、より恐怖を身近に感じられました。悪魔を信じていない私でさえも、もし光が自分の体に入ってきたら嫌だなと思い、恐怖感が増したのです。

そして、チャーリーが序盤で死ぬ急展開も見逃せません。てっきり明らかに不気味なチャーリーを中心に話が進むと思っていた方も多かったのではないでしょうか。予想もしていなかった展開はこの上なく哀しくて、その上グロい。「よくこんな話思いつくな!」と、ここでも監督の狂気に感嘆しました(笑)。

その後、家族が崩壊していく様も妙にリアルで、人間関係の軸でも物語が動いていることに気づきます。仲間だと思っていたジョーンがエレンと繋がっていたなんて、ゾクゾクしますよね。ありがちな展開とはいえ、最初からすでに死んでいる祖母の気味悪さが写真だけで充分伝わってくる点に独特の奇妙さを感じました。

最も嫌だったのは、憑かれた母が天井を這って移動するシーン。さっきまで被害者だったはずの母が突然悪魔側にまわる理不尽さと、天井という手の届かないところから見下ろしている構図の気持ち悪さに一気に緊張感が走りました。そこに全く脈絡もなく裸体のおじさんまで投入するなんて、まさにカオス。しかし、恐怖が笑いに変わるギリギリのラインで保たれているため心臓のバクバクが止まりません。

このように些細なことまで計算し尽くされたように見せかけて、理論では太刀打ちできない混沌を描いているところに本作が「最恐のホラー」だとされる理由があるのではないでしょうか。

何度も見るには勇気が要りますが、キリスト教における悪魔にまつわる様々な知識を得てから見返してみるのもいいかもしれません。個人的には、嫌な気分嫌な気分で打ち消したい時に見るのがオススメですよ(笑)。

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