今や、アニメ大国と言っても過言ではない日本において、世界でも唯一無二のジャンルと人気を誇るのが「ロボットアニメ」、中でも『機動戦士ガンダム』シリーズは国内外を問わず絶大な人気を誇り、2019年にはシリーズ第1作放送開始から40周年を迎えました。
長い間人々に愛される『機動戦士ガンダム』はこれまで多くの作品が様々なメディアで発表されています。
しかし、本編に対し多くの外伝やスピンオフ作品、別世界の物語など、初心者には何からチェックしていけばいいのか分からないという人も多いのではないでしょうか。
ここでは、そんなガンダムシリーズのオリジナルシリーズ宇宙世紀作品を分かりやすく解説、ご紹介していきます。
『機動戦士ガンダム』とは?
1979年にTVで放送された『機動戦士ガンダム』は『海のトリトン』や『勇者ライディーン』などで知られていた富野喜幸(後に”由悠季”に改名)が総監督によるSFアニメで『機動戦士ガンダム』は以降、富野監督の代名詞となっています。アニメのジャンルとしてはロボットアニメとなる『機動戦士ガンダム』ですが、放送当時、従来の侵略者から世界を守るといった勧善懲悪を軸としたストーリーとは異なり、泥沼の人間同士の戦争を描いており、登場するロボットも人類の英知を集めた希望の象徴と言ったポジティブなイメージとは異なり、徹底して「兵器」として描かれることから、既存のロボットアニメと区別するため「リアルロボット」と呼ばれる新たなジャンルを確立、以降の日本アニメ界に大きな影響を与えました。また、その人気は関連の商品の売り上げからも見て取れ、様々な商品が現在も発売され、高い人気を誇っていますが、その中でも格別なのがプラモデルです。日本のみならず、世界的な人気を誇るガンダムのプラモデルは「ガンプラ」の名称で広く親しまれています。ガンダムファンの中にはアニメからではなく、プラモデルからガンダムを好きになった方たちも少なくないのではないでしょうか。さらに、現在、ハリウッドで実写映画化の企画が進行中で、『キングコング:髑髏島の巨神』で監督を務めたジョーダン・ヴォート=ロバートが監督を務め、Netflixで全世界配信のアナウンスがなされていますが、配信日は2021年12月1日現在で未定です。しかし、すでに炎に包まれそびえたつガンダムらしき機体の影が移されたコンセプトアートが公開され、世界中が反響の嵐に包まれたことから、ガンダムの人気の高さがうかがえます。
作品紹介
『機動戦士ガンダム』は前述のとおり、多くの作品が制作されています。それらの作品は大きく二つに分けることができます。1979年放送の『機動戦士ガンダム』以降の「宇宙世紀」と呼ばれる架空の世紀を軸に時代を追い物語が進んでいくいわばオリジナルシリーズとこちらとは別の世界観で構成される「アナザーセンチュリー」と呼ばれる作品があります。今回は「宇宙世紀」作品をご紹介します。ここではアニメ作品として放送あるいは劇場公開された順番ではなく、「宇宙世紀」上の 時間軸に則って、一連の歴史としてご紹介させていただきます。
1.『機動戦士ガンダム』
宇宙世紀0079。サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に対し宣戦を布告、独立戦争を仕掛けます。開戦当初、戦力差において有利とされていた連邦軍でしたがジオン軍は人型機動兵器 モビルスーツ(MS)を実戦投入、さらに地球へのコロニー落としを敢行、全人口の半数が死滅するも戦況が膠着たまま7か月が経過します。サイド7に暮らす少年、アムロ・レイはコロニー内に侵入したジオン軍と連邦軍の戦闘に巻き込まれ、ひょんなことから連邦軍の新型MS「ガンダム」に乗り込み戦闘に介入、後に「一年戦争」と呼ばれることになる戦いに身を投じ、その中で、宿命のライバル、シャア・アズナブルと出会い、過酷な戦いの中、人類の革新、「ニュータイプ」へと覚醒していきます。
2.『機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー』
宇宙世紀0083。一年戦争ののち、平穏を取り戻したかに見えた地球圏でしたが散発的に抵抗するジオン軍残党と連邦軍との戦いが続いていました。連邦軍の新米パイロット、コウ・ウラキは後にデラーズ・フリートと名乗るジオン残党の襲撃に遭遇、ガンダム試作1号機を駆り、阻止しようとします。その中でジオンのエースパイロット、アナベル・ガトーと出会うコウはガトーを追い、後にデラーズ紛争と呼ばれる戦いに身を投じていきます。
3.『機動戦士Zガンダム』
宇宙世紀0086。連邦軍は未だ活動を続けるジオン残党のソウトウを名目にエリート部隊、ティターンズを組織しますが、過激な行動に世論の反発は高まっていました。に対し、連邦軍の一部と民間団体からなる反ティターンズを目的としたエゥーゴが組織されます。グリーンノア1に暮らす少年、カミーユ・ビダンは偶然、ティターンズとエゥーゴの戦闘に巻き込まれ、ティターンズの最新MSガンダムMk-2の奪取に加担、エゥーゴに 加わり、後にグリプス戦役と呼ばれる戦いに身を投じます。
4.『機動戦士ガンダムZZ』
宇宙世紀0087。グリプス戦役で勝利を収めたエゥーゴでしたが,その戦力を大幅に失い,第三勢力であるジオン残党軍,アクシズに漁夫の利を得られることとなり,地球圏の覇権を奪われてしまいます。サイド1のコロニー、シャングリラの少年、ジュドー・アーシタはひょんなことからZガンダムに乗り込むことになり,エゥーゴに参加,後にネオジオンと名乗るアクシズとの戦いに身を投じていきます。
5.『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
宇宙世紀0093。グリプス戦役以降,消息を絶っていたシャアアズナブルはネオジオンを再建,人類に対し地球からの依存を促すべく,軍事蜂起します。それにいち早く感づいた地球連邦軍 ロンド・ベル隊はシャアの思惑を阻止すべく行動を 開始,ロンド・ベルに所属するアムロ・レイもシャアとの因縁に終止符を打つべく,最後の戦いに臨もうとしていました。
6.『機動戦士ガンダムUC』
宇宙世紀0096。「シャアの反乱」とも呼ばれた第二次ネオジオン抗争から3年,連邦政府打倒を画策するネオジオン残党,「袖付き」は連邦政府を転覆させる秘密が隠されているとされる「ラプラスの箱」を入手しようと暗躍していました。 工業コロニー,インダストリアル7に暮らす少年,バナージ・リンクスは,連邦軍と袖付きの戦闘に巻き込まれ,謎の少女,オードリー・バーンとの出会いを果たし,偶然,乗り込むことになるユニコーンガンダムと共に,後にラプラス事変と呼ばれる宇宙世紀の始まりにまで遡る壮大な陰謀に巻き込まれていくことになります。
7.『機動戦士ガンダムNT』
宇宙世紀0097。ラプラス事変から1年、この事件で人知の及ばない未知の力を発揮したユニコーン ガンダムは封印されましたが、連邦軍は消息不明になっていたユニコーンガンダム3号機、 フェネクスの行方を捜していました。捜索部隊に加わる事になる、連邦軍パイロット、ヨナ・バシュタはフェネクスを巡る様々な思惑、陰謀に巻き込まれていきます。
8.『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
宇宙世紀105。シャアの反乱から12年、地球圏では地球連邦政府の腐敗が進み、地球を汚染から守る為、強制的に人々を宇宙に送り出す「人狩り」と呼ばれる政策に世論は大きな反発を示していました。そんな中、マフティーを名乗るテロ集団が連邦政府高官を暗殺する事件が多発。連邦軍はマフティーをせん滅するため、ケネス・クレッグ大佐を地球に派遣、ケネスが地球に向かうシャトルの中にはブライト・ノアの息子でマフティーのリーダー、ハサウェイ・ノアの姿がありました。そのシャトルでハサウェイはギギ・アンダルシアという少女と運命の出会いを果たします。
9.『機動戦士ガンダムF91』
宇宙世紀0123。敵対勢力を失った地球連邦政府の腐敗は留まることを知らず、政府高官の専横により地球の汚染に歯止めがかからない現状にマイッツァー・ロナはコスモ貴族主義を掲げ私設軍事組織、クロスボーン・バンガードを設立、スペースコロニー、フロンティアⅣを襲撃、フロンティアⅣに住む少年、シーブック・アノーはその戦火の中、家族や仲間を守るため、ガンダムF91を駆り、戦いに身を投じていくことになります。
10.『機動戦士Vガンダム』
宇宙世紀0153。地球連邦政府が形骸化し、各サイドが独自の自治を行い地球圏ではいたるところで紛争が起こっていました。そんな中で勢力を拡大するザンスカール帝国は地球に侵攻を開始、これに反抗する民間軍事組織、リガ・ミリティアでしたが、苦戦を強いられていました。ヨーロッパの小さな町、カサレリアに暮らす少年、ウッソ・エヴィンはひょんなことからリガ・ミリティアとザンスカール帝国の戦闘に介入、周囲の期待もあり、リガ・ミリティアのパイロットとしてザンスカール帝国と戦うことになります。
外伝紹介
宇宙世紀作品には数多くの外伝作品が存在します。前述で紹介した作品が歴史の表舞台の出来事とするならば、これらの外伝は決して表に出ることがない、言わば歴史の闇に消された出来事が多く描かれています。これらの外伝はアニメ以外に漫画や小説、ゲーム作品など様々なメディアで展開されています。今回は、それらの中から、一部ではありますが、おすすめの作品をご紹介します。
・『機動戦士ガンダム MS IGLOO』シリーズ
『機動戦士ガンダム』の時間軸、一年戦争においてストーリーが展開しますが、ジオン軍の
兵器開発にまつわる物語となっており、ジオン軍の技術者、オリヴァー・マイの視点で
語られるガンダムシリーズの中でも特異な作品になっています。
全編、3DCGで描かれ重厚なメカの表現が高く評価されていますが、決して表舞台に上がる
事がなかった兵器たちと意地とプライドを貫く男たちの熱い物語が人気を博しました。
・『機動戦士ガンダム戦記 』(ゲーム)
PS3で発売されたアクションゲームで宇宙世紀0081の表向き、平和を享受しているよう
に見える地球圏でジオン軍残党による反抗作戦「水天の涙」により勃発した紛争を部隊に
連邦軍パイロット ユーグ・クーロとジオン軍パイロット エリク・ブランシェの二人の視点で物語が語られます。
プレイヤーは連邦軍、ジオン軍それぞれの陣営を選択することができ、一つの事件を別々
の視点で楽しむことができます。
また、操作するMSは自分のあったプレイスタイルに合わせてカスタマイズすることが
できます。
・『機動戦士ガンダム 逆巣のシャア ベルトーチカ・チルドレン』(小説)
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の原作となった富野由悠季による小説で、『逆襲のシャア』とは一部内容が異なりますが、登場キャラクターの心境や人間関係がより深く濃厚に描かれています。また、同作に登場する機体、Hi‐νガンダムとナイチンゲールは高い人気を誇り、未映像化にもかかわらずゲーム作品やプラモデル等、商品化がされています。
・『機動戦士クロスボーンガンダム』シリーズ(漫画)
極秘裏に地球振興を企てていた木星帝国とそれを阻止すべく活動するクロスボーン・
バンガードとの戦いに巻き込まれた主人公、トビア・アロナクスはクロスボーン・
バンガードのパイロット、キンケドゥ・ナウとの出会いを経て木星帝国との戦いに身を投じていきます。
同作は『機動戦士ガンダムF91』の後の物語として描かれ、『F91』に登場したキャラクター
が物語に関わっています。また、同作に登場するクロスボーンガンダムは名デザイナー、カトキハジメ氏デザインの
ガンダムとして広く知られ、高い人気を博し、後のシリーズ化へと大きく影響しています。
まとめ
いまだ留まることを知らず広がり続ける「ガンダム」のオリジナルシリーズと言っても過言ではない、「宇宙世紀」生みの親である富野由悠季以外の監督により多くの作品が手掛けられ、それぞれの作品で特色がありますが「戦争を通しての人間模様と成長」を普遍的なテーマに様々なプロセスで戦争の醜さや人類の可能性が語られています。各作品に結びつきはあるものの、それぞれの作品で一つの「出来事」として描かれているため単体でも楽しむことができます。これを機会に興味が出た作品を、あるいは一つの歴史の立会人の気分で最初から楽しんでみてはいかがでしょうか