落ち込んだら観るべき!心温まる感動映画『グリーンブック』の感想とストーリー考察【ネタバレあり】

黒人の天才ピアニストとイタリア系移民の用心棒がアメリカ南部を旅する様子を描いた感動作「グリーンブック」。2019年のアカデミー賞では作品賞を受賞するなど、世界的にも高く評価された本作のあらすじや時代背景、レビューを紹介します。

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Melody of Movieの評価

94点

良い映画はたくさんあるけど、こんなにも幸せな気分で終われる映画は久しぶりでした!

当時根強くあったアメリカの差別問題も知ることができ、色々と考えさせられる映画です。

■各レビューサイト参考

映画.com:4.2

Yahoo!映画:4.49

Filmarks:4.2

みんなのシネマレビュー:3.93

※みんなのシネマレビューは10段階→5段階評価に換算しています

あらすじ(ネタバレあり)

 1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ・コパカバーナで用心棒として働くトニー・リップ。イタリア系移民の彼は、無学で荒っぽい性格ながらその腕っぷしは高く評価され、家族や仲間に囲まれて暮らしていました。

ある日、友人から仕事を紹介されたので面接に行ってみると、そこはカーネギーホールの上。不思議に思うトニーが部屋に入ると、現れたのは黒人のピアニストでした。コンサートツアーでアメリカ南部を回るのに運転手兼マネージャーとして働かないかと言われるトニーですが、なんだか腑に落ちない様子。「黒人と働くのに抵抗が?」と聞かれ「ないね」と答えるものの、断って帰ってしまいます。

 しかしトニーの評判を知っていたシャーリーは、高額を払い彼を雇うことを決意。こうして、クリスマスまでの2ヶ月間にわたる2人の旅が始まりました。

 出発初日、トニーに渡されたのは黒人専用の宿やレストランを紹介するガイドブック=グリーンブックでした。黒人差別が色濃く残る南部を旅するには必要不可欠なものだったのです。

 道中、寡黙なシャーリーをよそに一方的にひたすら話しかけるトニー。時には家族の話をしたり、フライドチキンを無理やり素手で食べさせたりと、シャーリーはガサツなトニーに呆れながらも、2人は次第に心を通わせていきます。しかし一方で、トニーはシャーリーが抱える孤独にも気づいていくのでした。コンサート会場では気品高く振る舞い、白人客からもてはやされるものの、一歩会場の外に出ると心無い差別に耐え続けなければいけないシャーリーを見て、なぜわざわざツアーをやり遂げる必要があるのか理解できないトニーなのでした。

 

旅も終盤のある夜、夜間外出禁止とされている黒人を車に乗せていたために2人は警官に捕まります。理不尽な対応に異議を唱えるトニーは思わず手が出てしまい、2人して拘束されることに。なんとか解放されましたが、「品位を保つことが勝利」だと考えるシャーリーはトニーの行動に腹を立てたまま、ついに言い合いになってしまいます。「お城で暮らすあんたより、貧乏な自分の世界の方がよっぽど黒い」というトニーの言葉をきっかけに、シャーリーは怒りながら本音をもらし始めました。それは、黒人からは金持ちであるが故に白い目で見られ、白人からは教養があるふりをするために自分の演奏を利用されているのだという、はぐれ黒人である孤独な彼の叫びでもありました。

 最後の会場となるアラバマ州で、トニーはついに南部ツアーの理由を知ります。それは、「ピアノの才能だけではなくて、勇気が人の心を変えるのだ」というシャーリーの信念からだったのです。しかし、ここでも彼だけレストランには入れないと言われてしまいます。トニーが説得しても店のしきたりだと言われ、事態は一向に決着がつきません。いつもなら我慢してやり過ごしていたシャーリーですが、レストランには入れないのなら演奏を放棄すると言い2人はその場を去ります。そうして向かった黒人が集まるバーで、ついにシャーリーは黒人たちの歓声の中、楽しそうにピアノを演奏するのでした。

 

 クリスマスイブの夜、2人の旅は終わりを迎えます。家族に再会しパーティーを楽しむはずのトニーでしたが、1人帰って行ったシャーリーのことが気になっていました。しかし、最後にはシャーリーが自らやって来て、トニーの家族に温かく迎えられるのでした。

黒人差別が当たり前だった時代背景

1962年というと、白人と有色人種を分離するジム・クロウ法が定められていた時代。古くからの奴隷制を廃止することを訴えていた北部とは違い、南部は奴隷による農業で暮らしている白人農園主が多かったため、奴隷制を維持しようとする州が続々とこの法律を制定するようになりました。そのため、まさに劇中で描かれているように黒人は白人と同じレストランやバーには入れず、その差別は合法的に認められていたのです。

「グリーンブック」も実在した

この作品を最も象徴するのがタイトルでもある「グリーンブック」ですが、これももちろん実在しました。生み出したのは、郵便配達員のビクター・ヒューゴ・グリーンという人物だそうで、初めて発行されたのは1936年。グリーン氏は黒人が安全に旅行できるようにと、彼らが利用できる宿泊施設やレストランのレビューを行い、そうして「グリーンブック」は作られました。ガイドブックとして黒人旅行者から支持を集め人気を博した結果、1966年まで毎年発行され続けたのだとか。ちなみに、アフリカ系のコミュニティ以外ではほとんど知られていなかったのだそうです。

モデルとなったトニーとシャーリー

 本編のエンドロールにもある通り、本作は実話を基に作られています。公式サイトによると、脚本を担当したニック・ヴァレロンガの実の父が、主人公のトニー・リップであった事が明らかにされています。本名はフランク・アンソニー・ヴァレロンガといい、劇中同様に子供の頃から口がうまかったためにリップというあだ名がつけられました。トニーはニューヨークのナイトクラブ「コパカバーナ」で働いており、そこでフランシス・フォード・コッポラと出会ったのをきっかけに名作「ゴッドファーザー」(1972)で映画デビューも果たしています。その後も数多くの映画やドラマに出演する俳優となりました。

一方のドン・シャーリーは、フロリダ州ペンサコーダ出身のピアニスト。2歳からピアノを始め、18歳の時にはボストン・ポップス・オーケストラと共にステージに立っています。さらに翌年にはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団との共演を果たすなど、若くしてキャリアを積んでいることが分かります。また、実際のシャーリーもカーネギーホールの上で50年以上も暮らしていたのだそう。劇中では家族と疎遠だと語られていますが、実際は4人兄弟の1人で、家族とは連絡を取っていたようです。

演じたキャストは?

 トニー・リップを演じたヴィゴ・モーテンセンは、「ロード・オブ・ザ・リング」3部作(20012003)のアラルゴン役で脚光を浴びた名優。その後デヴィッド・クローネンバーグ監督の「イースタン・プロミス」(2007)で主演を務めると、アカデミー賞主演男優賞で初ノミネートされるなど多くの作品で活躍しています。さらに、2021年には自身初の監督作「フォーリング 50年間の想い出」も公開予定です。本作では、これまでの役柄とは打って変わり、体格がよく食べることが大好きなトニーを見事に演じきりました。なんと、役作りとして14キロもの増量に成功したそうで、インタビューでは「これが限度だって感じがしたね」と、驚異の役作りの苦労を語っています。

一方、ドクター・シャーリーを演じたのはマハーシャラ・アリ。2017年のアカデミー賞で作品賞のほか脚色賞などを受賞した「ムーンライト」(2016)で、主人公の少年の父親代わりとなる麻薬ディーラー・フアン役を演じたことが記憶に新しいでしょう。わずか24分という短い出演時間にも関わらず、この作品でアカデミー賞助演男優賞を受賞しました。「グリーンブック 」でも2度目となる同賞を受賞しており、その他ゴールデングローブ賞助演男優賞やフェニックス映画批評家協会助演男優賞など、その演技力は高く評価されています。

解説とレビュー

 この作品の見どころは、何と言っても2人の関係性の変化ですよね。正反対の2人が次第に距離を縮めていく様子に心打たれました。

まずトニーのキャラクターですが、大食いでガサツな性格にとても好感が持てました。例えばドライブの途中、シャーリーに「ハンドルを持て」「静かにしてくれ」と言われているのにすぐ後ろを向いて喋りだしたり、言い間違えをしたり、きっとあまり分からないのにドイツ語が分かると言い出したり。社会に迎合することを知らない子供のような性格が、時に面白おかしく描かれていて、この物語のポップさを担っているように思いました。

しかし、そんな彼も最初は黒人の作業員が使ったグラスをゴミ箱に捨てたり、仲間内で彼らのことを「黒ナス」と呼んだりと、黒人差別が身に馴染んでいる1人でした。差別主義者を認識している人でなくとも、それが当たり前の時代だったのかもしれません。シャーリーと初めて会う面接の場面で、「黒人との仕事に抵抗はない」と答えた後「この間も妻ともてなした」と嘘をつきますが、この弱さが、今後彼が成長するためのいい振りになっていますよね。決して完璧ではない彼の性格に、親近感が持てたように感じます。

一方のシャーリーは、冷静で寡黙な人物。「暴力より品位」と考えているだけあって、さすがの人間力は見習いたいくらい。トニーの悪行を注意する時も諭すように話しかけます。あまり感情を出さないにも関わらず、彼の表情だけで何となく切なさが伝わってくるのは、演じたマハーシャラ・アリの凄みとも言えるでしょう。その上、時おり見せる笑顔がとても可愛らしいのも魅力的です。チキンを食べるシーンや、ホテルでの演奏を放り投げてレストランに向かうシーンなどで見せた一瞬の笑顔に、胸がきゅっとなった人も多いのでは? 物語終盤、黒人たちに見守られながらレストランで演奏するシーンで、うれしそうにトニーの方を見ては笑顔になる描写には胸が温かくなりました。

そして、シャーリーが抱える孤独も本作の大きなポイントの1つだと言えるでしょう。それが黒人差別によるものだけでなく、黒人の側からも認めてもらえない寂しさをも含んでいる点が特徴的でした。

南部での差別の現状を目の当たりにしたトニーは、車のフロントミラーに映るシャーリーの物憂げな表情にも気づきます。(ガサツなくせに、そういうところはちゃんと見ているなんてこれもトニーの魅力ですよね)そのため私たち観客は、淡々と差別の事実を伝えられるのではなくて、トニーの目線を通してシャーリーの心境に寄り添うことができたのではないでしょうか。

 最も印象的だったのは、大雨の中2人がケンカをするシーン。差別に耐えるシャーリーを近くで見て来たにも関わらず、「あんたは黒人を知らない。貧乏な自分の方がよっぽど辛い」と主張するトニーのセリフは衝撃的でした。荒っぽいけれど素直なトニーの性格がよく表れている場面だと思います。彼は、シャーリーが差別を受ける屈辱を理解できなかった訳ではなくて、彼のことを1人の人間として見ているからこそ、こう言ったのではないでしょうか。孤独だったシャーリーにとって、初めて自分のことを見てくれたのがトニーだったのかもしれません。改めてこれが白人と黒人の物語なのではなくて“2人の人間の物語であるのだと伝わってくる場面でした。

 私が一番好きなのは、ケンカをした後にトニーがシャーリーに言う「寂しい時は自分から先に手を打たなきゃ」というセリフです。疎遠になっている兄が連絡をしてこないという流れで言った言葉でしたが、これを覚えていたからこそ、ラストシーンでシャーリーはクリスマスイブの夜トニーの家を訪れることができたのです。寂しい時こそ1人殻にこもってしまいがち。いいこと言うなぁと感心しました。これが出来たら悩まないんですけどねと思いながらも(笑)、最後に勇気を出してトニーの家に行ったシャーリーの姿には涙が止まりませんでした。孤独に耐えながらも「勇気が人々の心を変える」と信念を貫いて立ち向かうシャーリーの姿にトニーは感化され、そんなシャーリーもまた、トニーの優しさや真っ直ぐな性格に触れることで孤独から抜け出すことができたのでしょう。トニーの妻・ドロリスが、ずっと待っていたと言わんばかりにシャーリーと熱いハグをする描写にも胸がいっぱいになりました。何度見ても、最後のシーンは涙が出てしまいますよね。

まとめ

 2人の友情に心が温かくなる感動作「グリーンブック」。黒人差別という本格的なテーマを扱いながらも、2人の絆をポップに力強く描いている本作は、何度でも楽しめるでしょう。優しい物語に癒やされてみては、いかがでしょうか。

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