はじめに、この作品を観たことがない方のために言っておかなくてはならない大事なことがある。それは字幕版、吹き替え版同様に、ジョーカーの重要なセリフが誤訳になっていることである。最近出た一部の媒体では修正されているらしいが、大半が誤訳のままになっているらしいので注意していただきたい。
✖️「何が混乱を起こす?」「恐怖だ」
◯「何が混乱を起こす?」「公平だ」
「21世紀最大の誤訳」と言われたほど、大きな問題になったのでご存知の方もいるかもしれないが、本作のテーマを理解する上で重要な部分になっているので覚えておいて欲しい。そして故ヒース・レジャー氏が怪演し、絶賛されたジョーカーの魅力にも注目だ。
目次
Melody of Movieの評価
94点
■各レビューサイト参考
映画.com:4.3
Yahoo!映画:4.39
Filmarks:4.2
みんなのシネマレビュー:3.85
※みんなのシネマレビューは10段階→5段階評価に換算しています
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- 製作国 アメリカ合衆国 / イギリス
- 配給 ワーナー・ブラザーズ
- 監督 クリストファー・ノーラン
- 脚本 クリストファー・ノーラン / ジョナサン・ノーラン
- 公開年 🇺🇸 2008年7月18日 🇯🇵 2008年8月9日
- 上映時間 152分
- 出演者
- ブルース・ウェイン / バットマン(クリスチャン・ベール)
- ジョーカー(ヒース・レジャー)
- ハービー・デント / トゥーフェイス(アーロン・エッカート)
- レイチェル・ドーズ(マギー・ジレンホール)
- アルフレッド・ペニーワース(マイケル・ケイン)
- ジェームズ・“ジム”・ゴードン(ゲイリー・オールドマン)
- ルーシャス・フォックス(モーガン・フリーマン)
- アンソニー・ガルシア市長(ネスター・カーボネル)
- サルバトーレ・マローニ(エリック・ロバーツ)
- ラウ(チン・ハン)
- ギャンボル(マイケル・ジェイ・ホワイト)
- ジョナサン・クレイン / スケアクロウ(キリアン・マーフィー)
- 銀行支店長(ウィリアム・フィクナー)
- クリスチャン・ベール
ミュージシャンを目指す姉の影響を受けて音楽の道を志すも、途中で役者志望に転向。
10歳で演技をはじめ、演劇学校に入学し、いくつかのCM出演を果たした。
1986年にMr.ビーンで有名な「ローワン・アトキンソン」の舞台「The Nerd」に出演。
13歳でスティーブン・スピルバーグ監督作品「太陽の帝国」で4000人のオーディション
参加者の中から主人公役に選ばれ映画デビューを果たす。「アメリカン・サイコ」や
「ターミネーター4」のジョン・コナー役など多数の作品に出演し、着実にキャリアを重ねる。
第68回ゴールデングローブ賞助演男優賞、第83回アカデミー賞助演男優賞を受賞。
- ヒース・レジャー
オーストラリア出身の俳優。オーストラリアで、テレビ・映画に出演後1999年に
「恋のからさわぎ」でハリウッドデビューを果たす。当初はアイドル路線だったが、
ほどなくして本人が路線変更。以降、出演作品を選ぶようになった。
26歳でアカデミー主演男優賞にノミネートされ、一躍、若手演技派俳優として注目されるように
なった。その後も順調にキャリアを重ねていったが、2008年に睡眠薬などの薬物併用接種による
急性薬物中毒と、当時インフルエンザにもかかっていたことが重なり、本作「ダークナイト」の
完成を待たずに、マンハッタンの自宅アパートで死亡した。死後「ダークナイト」が公開され、
その演技が高い評価を受けて、アカデミー助演男優賞を受賞した。
- アーロン・エッカート
ニール・ラビュート作品の常連俳優。大学在学中にニール・ラビュートに出会い、ラビュートの
手がける演劇に参加。1997年、ラビュートの監督デビュー作「In the Company of Men」で
映画デビュー。この作品でインディペンデント・スピリット賞新人俳優賞を受賞。
その後も様々な映画に出演し、2006年公開の「サンキュー・スモーキング」では
ゴールデングローブ賞 主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされた。
因みに、同年にピープル誌の「世界で最も美しい50人」に選出された。
- マギー・ジレンホール
父親はスウェーデン系の映画監督で、母親はユダヤ系の脚本家。1992年に父親の作品でデビュー。
2000年に「クローサー」で舞台デビューを果たす。ハリウッド大作から自主制作映画まで、
様々なジャンルの映画に出演。本作「ダークナイト」では、ケイティ・ホームズの降板に伴い
レイチェル・ドーズ役を演じた。
- マイケル・ケイン
60年以上にわたり映画界で活躍し続けるレジェンド。
『ハンナとその姉妹』『サイダーハウス・ルール』で2度のアカデミー賞受賞。
『ダークナイト』シリーズの執事、アルフレッド役や『キングスマン』のアーサー役で知られる俳優。
- ゲイリー・オールドマン
イギリスの俳優。1982年「Remembrance」で映画デビュー。1986年の
「シド・アンド・ナンシー」ではセックス・ピストルズのベーシストを演じて注目を集めた。
1990年代から多数のハリウッド映画に出演し、「JFK」の暗殺者役、「ドラキュラ」では
ドラキュラ、「レオン」では汚職刑事を演じて高い評価を得ている。英国アカデミー賞では
英国作品賞を受賞。以降も「ハンニバル」でレクター博士の敵役を演じ、ハリーポッターシリーズ
ではシリウス・ブラック役として最終章まで参加した。2018年、第90回アカデミー賞で
念願のアカデミー主演男優賞を受賞。
- モーガン・フリーマン
世界的に有名な俳優の1人であり、『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー賞助演男優賞を
受賞。『ショーシャンクの空に』や様々な作品で高い評価を得ている。
商業的にも成功を収める映画に多数出演し、出演作品のチケット販売は累計40億ドル以上。
世界中で高収益を上げた俳優の中で歴代2位にランクインしている。
- ネスター・カーボネル
キューバ系アメリカ人の俳優。2007年~2010年まで人気テレビドラマシリーズ「LOST」で
リチャード・アルパートを演じる。様々な映画やテレビドラマに出演し、アニメの声優としても活躍。
本作でゴッサム・シティの市長を演じ、続編の「ダークナイト・ライジング」でも市長役を演じた。
『ダークナイト』あらすじと解説
ゴッサム・シティは犯罪者で溢れかえっていた。バットマンであるブルース・ウェインは、
腐敗しきっていた地元警察に任せてはおけないと、自身の手で街を浄化しようと決意する。
そして唯一、信頼のおけるゴードン警部補と共に、来る日も来る日も犯罪集団との戦いに
明け暮れていた。そんなある日、銀行が数名の強盗に襲われる。バットマンは、ゴードン警部補と
共にその事件の調査に当たり、ある男の存在が明らかになった。それは紫のコートに身を包み、
ピエロのメイクをした「ジョーカー」と呼ばれる男だ。ジョーカーが銀行を襲って得た大金の
ほとんどがマフィアの資金源だった為に、マフィアから命を狙われることになるが、それを
承知の上で自らマフィアに接触した。マフィアとの交渉の末バットマンを殺害するという計画になる。
ジョーカーはマフィアだけでなく、汚職の温床になっている組織(政治家・医療機関・警察など)の
人間を巧みな話術とカリスマ性で仲間にしてバットマンたちを翻弄する。こうして、ジョーカー
という素性の知れない殺人鬼と、正義感溢れる男たちとの間で戦いの火蓋が切られた。
『ダークナイト』見どころ
やはり最大の見どころは、故ヒース・レジャー氏が演じるジョーカーの策略だろう。
腐敗しきったゴッサム・シティには、バットマンが活躍すると困る人間たちが多数いる。
そういう人間たちを次々と取り込み、影で糸を引きながら巧みに操りバットマンたちを
追い詰めていく。善悪の境界がないカオスな世界を、ジョーカーという悪役を通して見せた
監督の見事な演出と、主役を喰ってしまいそうなヒース・レジャーの演技。
そしてハービー・デントとブルース・ウェインの間で揺れ動くレイチェル・ドーズの女心も
見どころの1つで、あげたらキリがないほど見どころだらけで最初から最後まで目が離せないぞ!
『ダークナイト』主要登場人物紹介
- ブルース・ウェイン(バットマン) / クリスチャン・ベール
ゴッサム・シティの大富豪で慈善家。少年時代、目の前で両親が強盗に射殺される。
その出来事が、彼のその後の人生を形成する。犯罪者達の最大の強敵になることを
決意し、犯罪者達との戦いに人生を捧げるためバットマンになった。通常のスーパーヒーロー
と違い、特殊な能力もパワーもない。莫大な富、テクノロジー、武術や脅迫などを駆使して
犯罪者と戦う。バットマンは世界で最も偉大な探偵の1人、もしくは世界最大の犯罪解決者と
みなされているらしい。
- ジョーカー / ヒース・レジャー
指紋、DNAといった情報が一切データベースにない。顔にピエロのメイクを施した
正体不明の謎の男。笑ったように見える口元は「グレゴリースマイル」といって、
ナイフなどの刃物で切り裂いた「笑っているような」口を意味する。その傷の由来を人に
話す時、「アルコール依存症の父親に切り裂かれた」「借金取りに顔を傷つけられた妻を
笑わせるために自身で切り裂いた」など、都度内容が変化するので本当の由来は不明である。
今作でのジョーカーは、過去作品のように薬品による変異ではなく、自分でメイクしている
という設定になっている。ヒース・レジャーの役作りのこだわりで、「ジョーカーならメイク
しても手を洗わないだろう」という理由で、手袋を外した指先は白く汚れたままになっている。
- ハービー・デント(トゥーフェイス) / アーロン・エッカート
ゴッサム・シティの新任検事。市民からは「光の騎士」として信頼されている。
とても正義感が強く、バットマンやゴードン警部補と共に犯罪者達と日々戦っている。
かつては内務調査部におり、当時は警官達から「Harvey Two Face(ハービー・トゥーフェイス)」
と呼ばれていた。父親の形見であるコインを常に持ち歩いており、物事を決定する際は必ず
コイントスで決定する癖がある。
- レイチェル・ドーズ / マギー・ジレンホール
ゴッサム・シティの地方検事局に勤めている女性検事。ハービー・デントの部下であり恋人でもある。
ブルース・ウェインの幼馴染で、幼い頃はブルースと仲が良く一緒に遊ぶことが多かったが、
ウェインの両親の死を機に長い間疎遠になってしまった。数少ない、バットマンの正体を知る1人
として不正に屈することなく、法を以って正義を貫こうとする信念を持ち悪と戦い続けている。
- アルフレッド・ペニーワース / マイケル・ケイン
ウェイン家の執事を務めている。アルフレッドの父もウェイン家に務める執事だった。
ブルースの両親が射殺され、ブルース同様アルフレッドも人生が一変した。幼かったブルースを
育てる責任を引き受け、ウェイン家に対して格別な思いを抱いていたアルフレッドは、この少年を
立派な大人に育て上げるべく、父トーマスの立派な後継ぎに仕立て上げた。悪と戦うため、
マントを羽織るという選択をしたブルースにもアルフレッドは律儀についていった。
そして技術面、怪我のケア、緻密なスケジュール管理など、あらゆる局面でサポートしている。
- ジェームズ・“ジム”・ゴードン / ゲイリー・オールドマン
ゴッサム・シティ市警本部長。高度な訓練を積んできた勲章を誇る敏腕刑事。
バットマンの味方の中で最も古い付き合いであり、広く知られる朋友の一人にあげられる。
バットマン同様、悪に立ち向かう決意は固く、ダークナイト(暗黒の騎士)と組むのは
法的に都合が悪いのは重々承知しているが、バットマンの様々な活動を黙認している。
- ルーシャス・フォックス / モーガン・フリーマン
アルフレッド・ペニーワースがバットマンの影の立役者なら、ルーシャス・フォックスは
ブルース・ウェインの影の立役者的な存在だ。バットマンの活動に必要なガジェットや
テクノロジーを提供する傍ら、自身でウェイン・エンタープライズの経営を管理している。
非常に知的でビジネスの才覚を持ち合わせており、そのおかげでブルースは夜の仕事に
打ち込むことが出来ていると言っても過言ではない。
『ダークナイト』ストーリーと感想
ゴッサム・シティに究極の悪が舞い降りた。ある日、マスクを被った男達が銀行を襲う。強盗達はジョーカーに雇われた奴らだ。別のビルから銀行の屋上に侵入し、セキュリティを無効化する役。高圧電流の流れる大金庫を開ける役。銀行内の市民を制圧する役。おそらく全員がプロフェッショナルなのだろう。非常に手際良く役目をこなしている。因みに、このシーンでジョーカー達に果敢に立ち向かった役名すらない銀行員は「ウィリアム・フィクトナー」氏だ。様々な映画やドラマで名脇役を演じ、大ヒット映画には必ずファクトナー氏が出ている!?とも言われている。もちろん私も大好きな俳優さんで、大人気テレビドラマシリーズ「プリズン・ブレイク」のマホーン役で知っている方も多いと思う。
冒頭のたった数分間の出演でありながら、多くの人の記憶に残ったのではなかろうか。結果、マホーンの・・・もとい、名もなき銀行員の抵抗むなしく、大金が持ち去られるのだが、実はその大半がマフィアの資金だった。ジョーカーの犯行でマフィアの隠し資金が露見してしまい、焦ったマフィア達は首脳会議を開き対策を練る。そこへ問題の張本人のジョーカーが現れ、交渉の末バットマンを殺害するという計画になった。ここまでの一連の流れは全てジョーカーの策略で、この先起こる事も全てジョーカーの策略だ。見どころで書いた通り、見た目とは裏腹な緻密に計算された行動。ネタバレは避けたいのでこれ以上、ストーリーの流れや内容など、細かくは書かないが、劇中でジョーカーが言った「俺が計画的な男だと思うか?」というセリフが、視聴者にしか解らないジョークになっている。
冒頭の強盗シーンからどれだけ緻密なのかという箇所が随所に見られるので、是非、細部までしっかり観て、上記のセリフにツッコミを入れていただきたい(笑)そして不協和音とノイズ、不安を煽るような羽音、打楽器などが不気味な雰囲気を醸し出し、そういった効果音やBGMといった「音」が、本作の哲学的で悲壮感漂う雰囲気に非常にマッチしているので、是非バックグラウンドで流れている「音」にも注目してほしい。
とにかく、一般的に言われる「ヒーロー映画」という作品で、人間の綺麗な部分から汚れた部分まで見せてくれる作品はなかなか無い。ヒーローの内面の葛藤を描くのが上手なDCコミックだが、バットマン=ダークナイト(暗黒の騎士)という部分が強調されていて、ヒーロー映画の枠組みを超越した傑作になっている。「英雄として死ぬか、生き延びて悪に染まるか」序盤で英雄の在り方について話していたハービーが言ったこのセリフ。ラストでバットマンがどういう意味合いで引用したのか。長編映画ではあるが、是非ラストまで観てこの言葉の示す意味を確認してほしい。
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